シュローダー

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qのシュローダーのレビュー・感想・評価

4.8
公開初日に1回。IMAX調整バージョンであるver3.333で1回観た。公開当時はまだ小学生だったので訳がわからなかったが、映画を観慣れた現在改めて観ると、めちゃめちゃ面白かった。画面に映るすべての要素がフェティッシュの塊なのだ。冒頭の二号機発進長回しシークエンスからそのまま雪崩れ込む宇宙戦。この後のシンジ君とカヲル君の関係性を暗示するかの様に天地真理の「ひとりじゃないの」を歌うマリ。発進するヴンダー。カヲル君とシンジのピアノの連弾。エヴァ同士のバトル。どのシーケンスも構図がバキバキにキマり、鷺巣詩郎節全開の鮮烈な劇伴と快楽が極まり尽くした編集のテンポによって、ドーパミンを噴出させてくる。作り手がやりたい事を徹底的にやっている見せ場と並行して描かれるのは、これまた往年の庵野秀明節が息を吹き返したような不条理な展開を見せるストーリー。前回の「破」でセカイ系の典型の様な選択をした事に対する「責任」を正面から突きつけ、シンジ君を徹底的に追い込む。それに対して、冷徹に振る舞いきれないアスカやミサトさんの迷い、「違う」存在として拒絶され、改めて自己を問い直すアヤナミレイ、シンジ君が抱えた罪を代わりに肩代わりして赦しを与えるカヲル君。この様なシンジ君と「他者」たちの関係性の描写がシンプルながら全てに於いて的確で無駄がない。これこそがまさにエヴァがエヴァ足りえる所以であり、少女マンガに源流を持つ人間描写の充実感が作家庵野秀明の真骨頂である事は、最早言うまでもない。そして、終わるべき所で完結する絶望感に溢れながらもほのかな開放感も同時に漂わせるあの見事なラストに涙が浮かぶ。その続きがとうとう観れてしまう。エヴァが本当の本当に終わるその瞬間を目撃出来るのはこの時代に生きて来れて良かったと、後年になって自慢できる体験になるだろう。「シンエヴァンゲリオン劇場版」超楽しみです。