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15歳のダイアリーのemilyのレビュー・感想・評価

15歳のダイアリー(2004年製作の映画)
3.8
15歳の少女ハイジは母親の恋人と流れでキスしてしまったところを母親に目撃され、家を飛び出す。小さなリゾート地で孤独を埋めるように男たちと体を重ねる。バーでジョーという青年に出会い恋に落ちる。

冒頭からオルゴールの箱を開けて広がるようなキラキラした音楽と青い色彩が美しい朝焼けの幻想的な景色から、オレンジの光に包まれた部屋、夜のきらびやかなネオン、全編朝焼けの青に包まれ、青春の自由と危うさを交差させる。

若干15歳の少女は母親の蔑んだ目を見て、家を飛び出し、愛を求めて彷徨う。なんとか住処を見つけ、仕事を見つけ、気になる人もできる。ゴーグルをつけると、広がるピンク色の世界のように、全てはうまく転がり始めるようにみえた。一方気になる存在のジョーも家族の問題を抱えておりなかなか心はひらけない。二人は恋愛に発展しそうな絶妙な距離感を保ち、その狭間に二人の心情が見え隠れしてくる。

全編を通して、色彩の幻想感と良質なエレクトロニカの浮遊感、静から動への切り替えに爆音のディスコがなんどもエピソードに食い込むように交差し、イライラと寂しさの繊細な心情をしっかりあぶり出す。雪景色、澄んだ青の色彩の中に小物使いで色やテクスチャーを加える。赤い手袋、雪景色のキーホルダー、おもちゃのチープなピアノの音からディスコの冷めた機械音へ。

シーンを巧みに切り替え、そこに広がる光の陰りが絶妙だ。心と裏腹な行動を取ってしまうのは彼女だけではない。それぞれのエピソードがしっかりハイジに交差し、リリカルな中にしっかり根付くひとの優しさや強さを重ね合わせる暖かな目線が、オレンジの光に溶け込む。

傷付くのが怖くなかなか人と向き合えないジョーとモーテルの女性やバイト先の同僚、その弟などとの関わりを隔て、目を背けてきた現実に向き合う。それは綴ってきた日記を介して、そこに確かにある愛を感じることで、旅は終わりを迎える。15歳の少女の危うさ、性への目覚め、葛藤やイライラが色彩と音楽と小物使いで見せる。小さな世界も見方を変えればピンク色にも、輝く。人との出会いが人を変え、変わっていく人がまた誰かの希望へつながっていく。。
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