エネル

縞模様のパジャマの少年のエネルのレビュー・感想・評価

縞模様のパジャマの少年(2008年製作の映画)
4.0
映画を未鑑賞の方へ
レビューを書いていてあれなのですが、感想やあらすじなどの予備知識は極力入れずに、鑑賞することをお勧めします。















観終わった直後に書いているんですが、心がずっしりと重く、そして辛い。劇中も胸が常に苦しかった。何て救いの無い映画なのでしょうか…

軍人の父親を持つ8歳の少年が家族と一緒にユダヤ人の強制収容所の近くに引っ越した事で物語が進んでいく。8歳で遊びたい盛り少年にとっては、余りに酷な環境で、友達とも離れてしまったなら尚更、家の周りを探検したり、やりたい事を見つけたくなるのは自然なことです。世の中が今、どんな状況なのか、ナチス政権がユダヤ人に対して何を行なっているかなんて、順風満帆な生活をしている幼い子供には関係ない事。自分が見たり聞いたりしたことが彼の世界となる。大人が行動を抑制、制限すればするほど、好奇心旺盛な少年の探究心は高ぶる。生活している中で不思議に思ったり、気になったことがあれば知りたくなる。例えその真実が、非人道的で残虐な現実であっても。映画自体の話はフィクションであっても、人類が忘れてはいけない最悪の歴史であることは間違いない。

ホロコースト映画は数多くあるが
今まで余り見なかった、ユダヤ人の目線ではなく、迫害する側の立場である、ナチス政権下の軍人の家族を中心で話が進む。私は世界史に詳しくないので、作品の中で知ったのは皆がみんな、ユダヤ人迫害に意欲的という訳でも無いという事を知った。ただ、公言するのは危険で、目を瞑って見ないようにしていた。それが主人公の母然り祖母なのだろう。主人公の純粋な質問に立場のある父や母は難しいものだろうと表情や仕草から読み取れた。普通に生活していても、父の仕事や、ユダヤ人の差別が垣間見える生活空間が、少年の素直な疑問なのだ。一つ一つの質問が狂った当時のドイツに突き刺さる。

立場は違えど同じ友達が欲しい8歳の少年で、主人公の取り巻く環境が世界の常識のように考えるため、二人の会話の中にギャップが生じる。ユダヤ人の服装についている番号を見て遊んでいるなどと思ったり、高い柵が動物が逃げないようにしていると考える。まだ8歳の少年には難しく、理解しがたいものだろう。だからこそ、鑑賞している側の私達の胸を締め付ける。主人公が思う世界と現実のとのズレや違和感が気づいていく様が怖くて仕方がなかった。

物語終盤は、唐突でそして急速に進み、予想もしていなかったラストが待つ。子供は何も悪くない、ただその時代が大きく間違っていた…
エネル

エネル