nagashing

ブロンドの恋のnagashingのレビュー・感想・評価

ブロンドの恋(1965年製作の映画)
4.0
少女たちのナチュラルでメランコリックなふるまいと、男性や中年の戯画化されたコミカルさが対照的。どちらも細やかな人間観察だけが可能にする描写であり、フレーム内に人物が錯綜する画面を俯瞰しているかぎり、ペーソスとユーモアの混淆する悲喜劇として楽しめてしまう。しかし、当事者のひとりであるアンドゥラにとって、そのギャップは、ミールダの家の寝室をへだてる扉さながら、深刻な断絶として横たわる。
この映画は、女子寮の寝室という親密な空間において、彼女の体験が虚実を混じえながらひっそりと語られるシーンに始まり終わる。そこには不可侵性があり、このブックエンド方式は両端の口を閉じて密封した容器のようだ。アンドゥラの不憫さに同情しつつも、その軽率さには苦笑するしかないおっさんには、この中にみずみずしく保管された彼女の切実さにふれることは、けっしてかなわないのだろうと思わせられる。
nagashing

nagashing