Mayuzumi

ポゼッションのMayuzumiのレビュー・感想・評価

ポゼッション(1981年製作の映画)
5.0
 これは火星人の映画である。地球人が現在鑑賞しても到底理解できるとは思われないほど、あんまりクレイジーな映画であるからだ。しかし同時に、これは主演のイザベル・アジャーニの映画でもある。兎に角、この女の狂いっぷりが半端ではない。
 夫の仕事中に愛人を作ってしまうという導入を経て、突如、妻アジャーニが発狂する。普通なら浮気をされて発狂という流れの筈だが、自分で浮気しといて発狂するのである。セルフ精神病院である。そしてこれ以降妻による、ターボエンジン全開のクレイジー大進撃が開始され、別居になった夫宅へ何故か毎朝訪ねてきて、勝手にミキサーを引っ張り出して邪悪な形相で肉をがんがん詰め込んでミンチを作ったり、急に電動ドリルで自分の首を突き刺したりと、キャシー塚本なのかと見紛う台所での熾烈な攻防戦が、日々繰り広げられるのである。そして一部で有名なあの地下道のシーンは、もはや狂気を通り越して邪悪なコメディーと化しており、レジ袋の牛乳パックを袋ごと壁に叩きつけて景気よく粉砕したのを皮切りに、五分以上延々手を変え品を変えわめきつづけ、最後には床にへたり込んで体中から得体の知れない粘液をにゅるにゅる流し出すという衝撃映像で締められる。
 こう書くとアジャーニの一人芝居のようであるが、他にも彼女と性交する謎のクリーチャーの存在や、二人のホモ探偵のロマンス、夫を訪ねては終始蛸踊りをしながら哲学問答を闘わすマザコンの愛人や、妻に瓜二つの女教師の接近など、狂人・変態・奇想・シュール・不条理のオンパレードである。家族関係の解体を試みているところなどは、ある意味、『悪魔のいけにえ』に連なるブルータルなホームドラマであると解釈することも可能である。あるいは「戦争」を家族の一員として無理やり迎えた後に、あらためて認識される家族の、再生のドラマでもあるだろう。
 闇の中から炙り出されるような、風刺的なラストシーンである。