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モリーのakrutmのレビュー・感想・評価

モリー(1998年製作の映画)
3.0
自閉症の妹とその兄の交流を描いた映画。28歳の自閉症の女性モリーを演じたエリザベス・シューの演技は称賛できるレベルにあるが、映画全体の出来は良くない。まずは脚本に難あり。手術の前後での変化がきちんと描かれていない(手術の影響なのか、環境が変わったことによるモリーの成長・適応なのかがはっきりしない)ので、後半で「元に戻る」ということがどんな状態になるのかが理解できない。したがって、登場人物たちの心情も想像できず、感情移入のしようがない。兄のバックを演じたアーロン・エッカートの演技もイマイチ。バックの心情がうまく表現されていなくて、演技も単調。さらに、兄と女医の恋などの不必要なエピソードが、本作の焦点をますますぼやかせている。自閉症者が登場する映画としては、例えば『レインマン』が有名だが、残念ながらそのレベルには遠く及ばない。発達障害を描いただけでは必ずしも感動的な映画になるわけではないことを示す好例と言える。

ちなみに、自閉症者に対して脳外科的手術を行うという部分は空想の話なので、この映画を見てその部分を現実だと信じてしまう人がいるとすると、大変に心配である。そこら辺の配慮もあまり出来ていないように見える。自閉症が脳機能障害に起因するというのはほぼ通説になっている(いまだに親の育て方が原因だと主張する無能な研究者や政党もいる)が、手術を行うことはあり得ない。そもそも、自閉症などの発達障害はその人の個性とも切り離せないので、「治療(悪い部分を治す)」という概念自体がそぐわないとも言える。
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