emily

命の相続人のemilyのネタバレレビュー・内容・結末

命の相続人(2008年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

ひょんなことから人の病を癒す能力を手にしてしまった医師のディエゴ。しかしその能力は自分の身内には使えないのだ。その能力を手にしたいきさつが徐々に明かされ、そこに隠された人々の苦悩を知る。そうしてディエゴはある選択をする。

設定が非常に面白い。人を治せる能力の代償が自分の体を蝕まれる物はよくあるが、それが身内となると、心の痛みは全く違う。しかも能力を手にして、ある程度の人たちを治癒してから、その現実を向き合うことになるのだ。ファンタジーもしくはスピリチュアルに転ぶことなく、あくまでシリアスなヒューマンドラマの枠組みの中で、人間ドラマをしっかり絡め、見どころ満載にストーリーも展開していく。

医師として能力はあるが、患者の心には寄り添わないディエゴは、医学の枠を超えて患者の心を救うことはできなかった。しかし能力を手にし、その代償を払っていくことで、徐々に心に寄り添うようになる。不仲だった妻との関係性も隙間を埋めあうことで、共存しあえるようになってくるのだ。
シリアス路線のレールから外れることなく、静かに淡々と描写されていく。一人の命か大勢の命か、医師か父親か。彼に能力を相続させたアルマンの妻イサベルとの交わりにより、明かされていく真実。ミステリー要素の底に潜む悲しみと愛。幾層にも重なり合い、大きな選択をつきつけられる。どちらを選んでも正しいといえる。しかしどちらの選択も苦悩しか待っていない。しっかりした筋書きで心を引っ張っていかれる。

大事な人の死を目前にすると、そのかけがえのない存在に気が付く。日常で忘れがちな一番近くにいる大切な人、いつだって自分を支え、そのそばで犠牲になってる事を改めて考えさせられる。
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