ふき

エアポート・アドベンチャー クリスマス大作戦のふきのレビュー・感想・評価

3.5
親から引き離された子供たちが、妹のために雪に閉ざされた空港からの脱出を目指すアドベンチャー作品。

悪ガキを空港に閉じ込めようとする大人を、子供たちの特長や様々なギミックを活かして出し抜いていくのは単純に面白い。特に大人と子供のそれぞれが抱える心情的な動機が、クリスマスという一点で救われていく展開は、まさに「クリスマス映画」と言えるだろう。

なのだが、正直「え?」と思ってしまう瞬間の多い作品だった。
まず子供たちの描写不足な点が多すぎる。大人VS子供の構図と、スペンサーとグレースの関係に焦点を絞って九〇分以内に収めたせいか、ドナとチャーリーの接近が唐突だったり、単独行動を始めたビーフがしれっと空港から脱出していたり、スペンサーの一家の問題解決がフワッとしていたり(解決してない?)と、ディテールの欠落が目立つ。
特に単独行動のビーフは、無口キャラだけに背景描写が断片的な回想だけなので、もっと掘り下げて欲しかった。あの行動を「成長」と置かれても、現状の描写だけでは父親(アメリカ)のマッチョ志向に飲み込まれただけに見えてしまう。
あと個人的にドナを演じるクイン・シェファード氏が超好みなので……まあそれはいいか。

さらに上記のような描写不足の割りに、持ち主不明物倉庫でのダンスやまったりムードなシークエンスに長めの尺が割かれている。と言うかこの場面、「妹のために急ぐ状況」が継続しているにもかかわらず、なぜ自由時間なのだ? 「時間だ、行かなきゃ」とスペンサーが言って切り上げられるが、その理由は語られないので、いい会話もあるのだがいまいち乗り切れない(そのせいで追っ手に追いつかれてるし)。

と、楽しめなかったポイントも多い作品なのだが、大きなプラスポイントがある。
それがラストだ。邦題に『クリスマス大作戦』と入れながら九割方クリスマス感のない絵面が続いたところに、「お待たせしました!」と来くれば、そしてサンタクロースがあの人なら、感動せざるを得ない。多少の描き込み不足はあるものの、九〇分も付き合っていればキャラクターにも愛着が湧いているので、各々の未来を感じさせる終わり方にも嬉しくなってしまう。
そんな具合に、素晴らしい後味がある佳作だと感じた一作。来年のクリスマスにも是非見たいと思う。
ふき

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