ぴのした

ベンジャミン・バトン 数奇な人生のぴのしたのレビュー・感想・評価

3.6
ゴーンガール、ドラゴンタトゥーの女と見てきてどれも結構良かったので、この際デヴィッド・フィンチャー監督の映画を振り返ろう大作戦。

主人公のベンジャミン・バトンは老人として生まれ、歳を経るに従ってどんどん若返り最後には赤子になって死ぬという運命の星の元に生まれる。このベンジャミンの生涯を、死に瀕したベンジャミンの妻とその娘が彼の日記を読んで振り返るという構成だ。

どの映画もそうだったけど、この監督はやっぱり青とか灰色のような暗くて冷たい色が印象的な撮り方をするのね。映画全体に潜む不穏なムードとか切なさが強調されていていい味になっている気がする。

この映画が発表されて話題になった時、親が借りてきてぼくのいない間に見てたんだけど「人生が他人と逆回りなだけであとは普通。戦争に巻き込まれたり恋愛したりはするけど、そんなに面白くはなかった。」って言ってた。だから今まで借りてこなかったんだけど。
それはある意味当たってて、確かに物語としての起承転結はそんなにない。ライフヒストリーだから、老人編、船乗り編、父親編、結婚編、少年編、といくつかの幕に沿って淡々と構成されてるみたい。これを巻き戻せば確かに他の人の人生となんら変わらないもんね。

でもやはりベンジャミンが他人と違うのは、出会った人との死別の多さと死別までの早さなのじゃないか。映画の中でもオペラのおばちゃんとかピアノのおばちゃんとか、父親や船長、母親、そして妻といったように、人の死んでいくシーンが非常に多い。

人生はそんな出会いと別れの連続。数奇な人生を描いていながら、普通の人生にも普遍的である、人との出会いと別れ、その尊さのようなものを描いているんじゃないかなあ。

ちなみに一番良かったのは恋人がタクシーにひかれるまでの「もしも、あのとき…」のシーン。この映画全体の人生と時間とあうテーマにも沿ったすごい演出。グッときた。