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Go!Go!チアーズのGreenTのレビュー・感想・評価

Go!Go!チアーズ(1999年製作の映画)
3.0
『ある少年の告白』でも描かれていた、同性愛矯正施設の実態をポップに描く映画です。

メーガン(ナターシャ・リオン)は、17歳のチアリーダー。フットボール部の彼氏もいるが、車でペッティングしていてもなんだか盛り上がらない。それより一緒にチアをしている女の子たちの体を美しいと思う。

だけど、メーガンはそれをおかしいともなんても思っていないのに、周りが「こいつレズなんじゃねーか」と決めつけて、矯正施設に送るっていうのが怖いなあ〜と思いました。親だけでなくて、友達も「この人おかしい」ってグルなんですよ!

彼氏も、「俺とのキスを楽しめないのはレズだからだ」という結論になるのだが、自分の技術とか愛情とか、「自分ができることはないのかな」とは思わないのか。


この映画、制作は1999年なのですが、レズビアンのセックス・シーンのおかげでNC-17、つまりポルノ指定されたため、レズビアンのセックス・シーンを削った経緯があり、今年にそのシーンを入れ直したブルーレイが発売されたらしく、2021年付で出ていたので、私は今年の映画だと思って観ていたんですね。

なので、ミシェル・ウィリアムスにソックリな女の子が出てんな〜、矯正施設に入っているメアリーもキャシー・モリアーティにソックリだな〜と思ったんだけど確信がなくて、ゲイバーでナンパしてくるレズビアン役でジュリー・デルピーが出てきて「これ古い映画なんだ!」ってやっとわかった。

問題のシーンは、女の子同士がキスしている以外なにもエロいことはなく、おっぱいさえ出てこない。すごく美しいロマンチックな曲がかかって、この2人が純粋に愛し合っているんだなあと思わされる、いいシーンでした。なのでポルノ指定は、同性愛に対する過剰反応としか思えない。

映画全体の私の個人的な感想としては、まず、施設がすっごいポップ!女の子はピンクの制服、男の子はブルーの制服ですっごい可愛いし、建物もショッキングピンクとか、とにかく可愛い。風刺コメディなので、「実態を描く!」的なリアルな感じではなく、男女を色分けとか、メタファー的な部分をポップに無機質にしたのはクリエィティブだなあとは思う。

でも、風刺が効いているって感じもしなくて、ちょっと「ゲイのカタログ的ステレオタイプ」の域を出ていないのでは?って感じもしなくはない。

ちょっと「ん?」って思ったのは、グループ・セラピーでメーガンは「私は17歳の高校生で、チアリーダー、そして同性愛者です」って自己紹介させられ、他の人も「私はなになに、そして同性愛者です」って言うんだけど、ゲイの男の子の一人が「僕はユダヤ人、そして同性愛者です」って言うんですよね。他の人は「私は白人」とか「私はキリスト教」って言う人はいなくて、チアリーダーとか、何々をしていました、って言うのに、この子は「ユダヤ人」って、他にアイデンティティないの?ってちょっと人種差別的だなあと思った。

まあそんな感じで、あんまり深い映画じゃないなあとは思ったけど、メーガンという主人公が、レズだなんて思ってもいなかったのに、施設に入れられることで逆に「自分はレズなんだ」って気付かされる皮肉とか、あと、女の子の体をキレイだって思うことがおかしいなんて思ってもいなかったのに、施設でそれをおかしいと認めさせられるという、「矯正施設」の存在自体が間違ってるというのは納得させられた。

この施設に無理やり入れられなかったら、メーガンはもっと大きくなってから気の合う男性を見つけて自然とその人と恋に落ちることだってありえたよなあって思った。なんか最近、ゲイ・レズビアン、バイセクシャルだけじゃなくて、ノンバイナリーとか、どんどん面倒臭くなってきてるな〜って思ったけど、人間の性って私達が思っているほどハッキリ男!女!って決まっているわけじゃないんだろうなと思い始めてきた。男女の区別が大事なのは、子供を作るという機能的な問題だけで、愛情や性欲の対象っていう意味では関係ないんじゃないのと・・・。
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