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幸せなひとりぼっちのミートのレビュー・感想・評価

幸せなひとりぼっち(2015年製作の映画)
5.0
皆様ご存知のハリウッドのリメイク版「オットーという男」のオリジナル作品である。スウェーデン映画であり、原題は「オーヴェという男」という意味の"En man som heter Ove"である。順番的にはハリウッド版を観てからの鑑賞なのだが、どっちも良かったなあ。
スウェーデン人俳優のRolf Lassgårdが老けメイクでトム・ハンクスのオットーよりはるかに憎々しいオーヴェを演じる。色々説明がましいハリウッド版に比べて清々しく感じる脚本。ソーニャ役はやはりスウェーデン人俳優のIda Engvollが演じており、非常に上品で美しい。カーキチのおいら的にはハリウッド版での車に対するこだわりがピンとこなかったけど、オリジナルを観ると同じスウェーデンの名車であるボルボとサーブの好みの違いなのでわかりやすい。
また、オーヴェがこだわる「白シャツ」という言葉は「ホワイトカラー」のような概念なのではないかと思う。そう、レストランなど行ったことがないオーヴェは「ブルーカラー」であり貧しく、ソーニャは上流階級の娘さんなんだよね、おそらく。でも、そんな二人が恋に落ちて結婚できるスウェーデンの社会はとてもハッピー。そして本編でのもう一つの大きなテーマであるオーヴェと介護が必要な親友とのやり取り。その中で我々が習った「ゆりかごから墓場まで」という北欧の保険制度上の問題点がさりげなくあぶりだされる。
中東出身のおせっかいな婦人はIranian-Swedish actressであるBahar Parsが表情豊かに演じる。その容姿は多くを物語り、余計な説明は要らないものだなあと思う(ハリウッド版ではメキシコ出身だとか有名大学出身だとか説明がましい)。隣人が「干渉」なのか「おせっかい」なのかは映画を観る人が決めればいいと思うんだけど、オーヴェ(オットー)のように「男子」が面倒くさい場合、隣人が女子だから助けるのか、民族のキャラクターがそうさせるのかは微妙な問題だと思うのだ。ハリウッド版でややこしく感じるのは、たとえルールに厳しいという孤独な老人がいたとしても米国人なら放っておく筈なんだよなあというところ。
さて、僕が感じる最大の違和感はハリウッド版の上流居住区でも何でもない中途半端な舞台に対してだったのですが、それもオリジナルを観て凄く納得。原作ではごくごく小さいコミュニティの中の出来事だった訳。
僕の結論としては、ラストシーン(死後の世界で列車のコンパートメントでオーヴェがソーニャに再開するシーンね。)が凄く刺さって泣いちゃったので、その一点で断然こっちの方が好き。みんな、観てね(どっちも良いから)。
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