ほーりー

仮面の米国のほーりーのレビュー・感想・評価

仮面の米国(1932年製作の映画)
4.3
「ショーシャンクの空に」を筆頭に、これまで数多くの刑務所を扱った映画(捕虜収容所物も含めるとさらに多い)が作られているけど、その元祖はこの映画ではないかと思う(もしこれより古い映画があればご教示を!)。

実際の脱獄囚の手記を映画化した「仮面の米国」は、当時の劣悪な刑務所の状況を告発し、物議を醸した社会派作品。

これを観ると「ショーシャンクの空に」での囚人の扱い方はまだまだ人道的な方だったんだと気づかされる。

舞台は第一次大戦後のアメリカ。復員兵のポール・ムニは職にあぶれてしまい、各地を転々とする。ある夜、知り合ったばかりの男に無理矢理強盗の片棒を担がされる。

しかし、主犯の男は呆気なく警官に射殺され、その場にいたムニもそのまま御用となり、非情にも懲役10年の実刑が下される。

刑務所での待遇はまさに非人道的で、逃げられないように鎖で足枷がされ、強制労働の毎日が続く。この強制労働がまたヒドイ!

何しろ刑務官の許可を得ないで汗を拭うだけで鉄拳制裁。体を酷使して命を落とす囚人も現れ、当然、ムニは脱獄を決意する。そして、仲間の協力を得て、足枷を外して逃走をはかるが…。

「暗黒街の顔役」で極悪非道のギャングを熱演したポール・ムニ(顔がベネチオ・デル・トロっぽい)だが、今回はうって変わり、理不尽な状況に必死に耐える正義感を演じている。

あのマーロン・ブランドが最も尊敬した俳優と言われるだけあって、本作のポール・ムニの演技は比較的抑え目にもかかわらず、強烈な印象を残す。

それにしても「仮面の米国」って邦題は今一つピンと来ないが、原題の〝I Am A Fugitive From A Chain Gang〟ってのもちょっと簡潔にならんもんかなと思う(原作がそういうタイトルだったなら致し方ないが)。

なお、監督はのちに「哀愁」や「心の旅路」を撮るマーヴィン・ルロイ。メロドラマのイメージが強いが、初期はこんな硬派な作品も作っていたのでした。
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