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スタア誕生のほーりーのレビュー・感想・評価

スタア誕生(1954年製作の映画)
3.9
文字通り、ハリウッドの古典。1937年のオリジナル以降、三回もリメイクされるほど、シンプルなストーリー構成ながらディテールまで良くできている。その決定版といえばどれかといえば、ジュディ・ガーランド版の本作ではないだろうか。

オリジナルと比較して、本作の特筆すべき点としては、音楽の要素をいれたことである。

ノーマン・メインが何故初対面のエスターにあれだけ肩入れをするのか?純粋に歌が上手いという理由ができたことで、観客はこんな疑問をもたずに済む。

結構、劇中のミュージカルシーンが冗長という感想もチラホラ見受けられるが、楽曲が弱いというのもあるかもしれないが、『雨に唄えば』の「ブロードウェイ・メロディ」よりは個人的にはまだマシかなと。

あと、オリジナルではノーマンと対立するPRマン(オリジナルはライオネル・スタンダー、本作ではジャック・カースン)がかなり嫌な役でムカムカしたまま終わるが、本作ではそこが少し抑えられて、かつチャールズ・ビックフォード扮する撮影所長がビシッと言ってくれるので、まだスッキリ感じる。

それにしても、ノーマンのような酒浸りで凋落するスターを地でいくようなジュディ・ガーランドが、彼を支える女性を演じているというのは何と皮肉なことか。

しかも、この年のアカデミー賞はジュディの熱演の甲斐もなく、『喝采』のグレイス・ケリーが "酒で落ちぶれたかつてのスターを支える妻役" という本作と似たような役柄で獲得しているから尚更。

度重なるトラブルでMGMを解除されて以降、ステージで活路を見出だしていたジュディが、4年ぶりに銀幕に戻ってきた復帰作品(製作はワーナー)であるが、またここでもトラブルを起して大幅な赤字を出すなどして、再び映画の世界から遠のくことになる。

前述のオスカー獲得を逃したのも、ワーナーもがアカデミー賞でジュディを全然プロモーションしなかったからだという。

また、本作はスチール写真のシーンがかなり多いのも特徴。これは、一般上映する際に181分から154分にカットしており、1983年にカットされた部分を残された音源やスチール写真で176分に修復(?)したためである。

これだけのメジャー作品でカットされた場面が残ってないというのはなかなかのもので、このことからも撮影スタッフたちがよっぽどジュディに頭にきて捨てたとしか思えない。

ノーマン役のジェームズ・メイスンもちょっといぶし銀過ぎてミスキャストにも感じるが、これもジュディとのトラブルを避けて、当初予定していたキャストがコロコロ変わったためだという。

という、完璧な作品ではないけれど、それも踏まえて鑑賞すると色々な意味で面白い作品と思う。

■映画 DATA==========================
監督:ジョージ・キューカー
脚本:モス・ハート
製作:シドニー・ラフト
音楽:レイ・ハインドーフ
撮影:サム・リーヴィット
公開:1954年9月29日(米)/1955年5月15日(日)
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