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ヨーク軍曹のほーりーのレビュー・感想・評価

ヨーク軍曹(1941年製作の映画)
3.8
【信仰心と愛国心の間に……】

メル・ギブソン監督の戦争映画『ハクソー・リッジ』では、アンドリュー・ガーフィールドが宗教上の理由から敵は殺さず黙々と重傷を負った仲間たちを助ける兵士を演じていたが、本作品はその先駆的な映画だと思う。

『ヨーク軍曹』は第一次世界大戦中に実在したアルヴィン・ヨーク軍曹の半生を描いたハワード・ホークス監督作品(脚本にはジョン・ヒューストンも関わってる)。

出演はゲーリー・クーパー、相手役のジョーン・レスリー、そしてこの時代、必ずと言っていいほどクーパーと共演していたウォルター・ブレナン。

あらすじは、元々南部の暴れん坊の青年アルヴィン・ヨーク(クーパー)が、あることをきっかけに敬虔なクリスチャンに改心する……ここまでで物語の半分。

やがて折からの第一次世界大戦のアメリカ参戦によって彼もまた戦場に送られるのだが、元々射撃の腕はやんちゃ時代に鍛えたせいかピカイチなのですぐさま昇進の声がかかる。

だがアルヴィン・ヨークの心は、信仰心のために不殺生を貫くか、はたまた愛国心のために銃を執るのかで激しく揺れ動く。ここが本作の肝となる部分である。

『ハクソー・リッジ』だと殺さずに仲間を助けるという至極わかりやすい結論を出すのだが、本作のヨーク軍曹は違う。

この後、彼は彼なりの結論を出して、戦場に送られて、大きな戦果をあげるが同時に沢山の敵兵の命を奪うことになる。

だけど観ていてそれが違和感なく腑におちるのは、映像による説得力なのだろう。ヨークが戦場に行くことを決意した故郷の丘の場面は、何度観ても、ヨークがその結論に至ったのが至極当然と思えてしまう。

そしてその後の戦場で彼がとった行動についても、彼自身迷いながらも信念に基づいて戦闘に加わるのがこちらにも伝わってくる。

この辺りがハワード・ホークスって凄い凄いと言われる所以ではないかと思う。ストーリーとしては疑問に思うところも、説得力ある演出で「てぃっ!」とねじ伏せられる感がある。

とはいえ、敵兵を七面鳥と同じ手を使って撃つ場面については、あれをユーモアと捉えるか、悪ふざけと捉えるか、悩むところだが……。

役者について言えば、本作品は役柄がピッタリだったこともあり、ゲーリー・クーパーに初めてアカデミー主演男優賞をもたらしている。

なおこの翌年のアカデミー主演男優賞は『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』のジェームズ・キャグニーで、奇遇なことに両方とも相手役はジョーン・レスリー(まだ10代!)である。

という訳で、今回はアメリカが掲げる自由の御旗にまだ説得力のあった時代の作品のレビューでした。

■映画 DATA==========================
監督:ハワード・ホークス
脚本:ジョン・ヒューストン/ハワード・コッチ/エイベム・フィンケル/ハリー・チャンドリー
製作:ジェシー・L・ラスキー/ハル・B・ウォリス
音楽:マックス・スタイナー
撮影:ソル・ポリト
公開:1941年9月27日(米)/1950年9月2日(日)
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