KnightsofOdessa

下女のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

下女(1960年製作の映画)
4.5
[窓の外にはヤツがいる!、階段フェチには堪らない韓国版「テオレマ」] 90点

侵入者がブルジョワ家庭を破壊する「テオレマ」タイプのサイコ映画だが、異様にジメジメした空気や(二重の意味で)後味の悪さはサッパリしていたパゾリーニのそれと比べて桁違いに不快。

姉弟が仲睦まじくあやとりをする冒頭から、あやとりの予定調和の秩序とそこからの逸脱という本作品のテーマを提示する。工場で音楽レク教師をする男は妻と二人の子供に恵まれて裕福な暮らしをしている。生徒にラブレターを渡されても上司に告発する杓子定規かつ慎重な男だ。そんな彼は下女を雇入れ、彼女が家庭を少しづつ破壊していく。

ショットがぐわ~んとなるのはバグなのか仕様なのか判別できないが、近代的な自宅のデザインと相まって無機質で不快感を煽る。その他、開けたら人が居たり窓の外にズブ濡れの下女が居たりするシーンは結構お気に入り。
上の階にピアノと下女の部屋、下の階にキッチンや主寝室を配置したギヨンの手腕には感嘆。これによって上下を行き来する"階段"がふたつの世界を繋ぐ橋の役割を果たし、橋から落ちたふたりの子供は亡くなってしまう。階段フェチには堪らない。

また、ヒ素の瓶の使い方も非常に上手い。瓶の在り処を知る者が家の主導権を握ったことになる演出には唸るしかない。最初は家族全員が知っていた在り処が、下女の登場と台頭によって瓶が回収され、妻や娘が取り返そうとする試みも虚しく、男と下女の命を奪うのだ。ブルジョワの主人と下女が心中するってかなりパンチの効いたラストだよね。

だた一つだけ残念なのは、本作品が夢オチであることだ。これによってテンションが下がってしまった感は否めない。"あなたもそうなるかも、アハハ~"より、死んだ下女が階段で伸びてる画の方がラストに相応しいよ。

追記
娘の足が不自由なのってなんか意味あったんだっけ。
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