りっく

下女のりっくのレビュー・感想・評価

下女(1960年製作の映画)
4.5
ラストに第四の壁を易々と越えて観客に語りかけてくる、ある種の男という生き物たち全てに贈る教訓話である本作は、まず冒頭で幼い兄妹があやとりの糸を交互に自分の手にかけるクレジットタイトルから、蜘蛛の糸に絡め取られるイメージや、主導権が次々と入れ替わる今後の展開を暗示させる。

夢のマイホームを建てたが故に、広すぎる家に家政婦という他者が入る隙が生まれ、それが疚しい男の心の隙間に入り込み、内部から家庭を腐らせ、ひび割れしていく。大黒柱として君臨する家父長の脆弱さと、浮気をされてもマイホームと幸せな家庭の風景に固執する妻の滑稽さ。幸せの尺度や倫理観がねじ曲がり崩壊していく人間たちを笑いながらも、どこか身につまされる感覚に陥る。

終始二階建ての一軒家を舞台に展開するが全く飽きさせないのは、家庭内のパワーバランスが目まぐるしく変わっていく主導権の取り合いに加え、スライド式の扉やガラス窓、一階から徐々に二階へと居住空間が変化していく様を滲ませる美術など、パワフルかつ緻密な演出の賜物だろう。
りっく

りっく