開明獣

ヘヴィメタル/ヘビー・メタルの開明獣のレビュー・感想・評価

5.0
カルト・ムービー的に片付けられているが、当時のアニメフィルムとしては破格の15億円もの予算をかけており、興行収入はその倍を売り上げて、きっちり回収したスマッシュヒットを記録して、続編も作られている。後の欧米のクリエイターにも大きく影響を与えた作品。キッチュで、ビザーレでシュール。1981年にこんな作品出していたなんて、大幅に時代を先取りし過ぎ。日本では、まだナウシカも出てない時期なのに。

2万年後くらいに地球が滅びたあと、どこぞの星から宇宙人がやってきて、遺跡の中からアーカイブで見つけたら大よろこびしそうな作品。今現在、このテイストに感応出来るのは、そう多くはいないのだろうが、本作に共感出来る喜びは、ある意味一種の贅沢ではないだろうか。

ヘビーメタルと銘打ってるが、ジャーニーやドナルド・フェイゲン、ディーボなどの曲も使われている。びっくりしたのは、「十戒」「荒野の七人」「大脱走」の音楽を手がけてアカデミー賞音楽賞を受賞している巨匠、エルマー・バーンスタインが音楽を担当していること。「ウエストサイド・ストーリー」の作曲者で、名指揮者のレーナード・バースタインと良く混同されるが、エルマーは映画畑の重鎮。その大物が、本作ではロンドン屈指のオーケストラ、ロイヤル・フィルハーモニー・オーケストラを指揮しているのも驚きであった。そんじょそこらのアメコミアニメと十把一絡げには括れない。

"ロック・ナー"という名の緑の玉は悪の総体としてこの宇宙に君臨している。その絶対的な悪の力を持つ玉と人類や他生命体との邂逅がオムニバス形式で描かれている。スーパーヒーローは全く出てこず、エログロな、絵柄はまさしくアメコミのダークSF。ハードボイルドな作風で、渇きと黒いユーモアに満ち溢れた作品。

観る人をまさしく選ぶ本作を偶然見つけたのも、"ロック・ナー"の導きなのだろうか。それもまたよし!
開明獣

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