イチロヲ

シェラ・デ・コブレの幽霊のイチロヲのレビュー・感想・評価

シェラ・デ・コブレの幽霊(1964年製作の映画)
3.5
亡き母の幽霊に脅かされている夫人から除霊依頼を受けた調査員が、かつて依頼者の出身地にて発生した呪殺事件との関連性を探っていく。世界中の好事家が映像ソフト化を待ち望んでいた、幻のホラー作品。

怪異専門の私立探偵が、屋敷内で起こっている不可解な現象と依頼者の身辺を調査しながら、真相へと迫っていく。ヒッチコック寄りの映像作りになっているため、「もしもヒッチコックが本気で幽霊映画を撮ったら」という妄想に耽ることができる。

また本作では「幽霊の姿を可視化する」という、エポック・メイキング的な恐怖演出を採用。潜んでいる幽霊が「ヒントはここよー」と言わんばかりに霊障を引き起こしてくるため、多分に笑いを誘われてしまうが、ミステリアスな雰囲気作りは良好そのもの。

人間の恐怖心の根源を探ろうとする調査員と、ある事情により自己の恐怖心を増幅させている依頼者の対比。そして、因果応報を絡めてくる、極めて日本的な怪談劇が印象に残る。現在のホラー映画、またはビデオゲームへの影響力を推量すると感慨無量。
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