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愛は死より冷酷のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

愛は死より冷酷(1969年製作の映画)
4.4
[デビュー作からいきなりファスビンダー全開] 89点

想い出記録。ファスビンダーの映画は独特のエネルギーと厭世観があるから基本的に好きな部類に入るのだが、本作品はその良い例である。

最初にどっかの映画祭で上映されたときは批評家から”いろんな映画から好きなシーンパクって持ってきただけだろ”と散々叩かれたが、パクったからと言って映画然とするとは限らないし、本作品は映画然としているからその点偉大である。ただ、切って貼って感があるのも確か。
本人的にはウェルズの「市民ケーン」みたいなイタズラをしようと思ったのかもしれない。怒られて作った次作「出稼ぎ野郎」では既に通常運転になっているから、そんな気もする。

私が引用元を引っ張ってこられない雑魚だから好きなだけなのかもしれないが、そう考えると世界に広まっているという点で本作品は引用元に勝っているということになる。まぁ、私の頭のフィルターが”ほぼパクリ”くらいの類似でないと気付けないということが原因っぽいので、批評家の人もこれくらいアホになったほうが純粋に楽しめるのではと思ってしまう。

監督が自分の作品に俳優として出演している場合はよくあるのだが、その中でもファスビンダーは突出して俳優として成立している気がする。立っているだけで絵になる俳優というのも少ないが、ファスビンダーはそんな俳優の一人だろう。それで監督やって自分で出ちゃうんだから最強じゃないか。本人出演は以降「自由の代償」や「ベルリン・アレクサンダー広場」など中期後期まで続けていくことになる。

というわけで、結論を言えば切って貼って感が強いけど、エネルギーで誤魔化しきれているし、既にファスビンダーの空気感が漂っているから私は好き。

もう一点。ウリ・ロメルとハンナ・シグラのことを。
本作品以降、ファスビンダー映画の中核を成す重要な俳優・女優となるふたりの初登場作でもある。特に、ハンナ・シグラの如何にもゲルマン人的なエロさには惚れ惚れする。まつ毛バチバチだし。
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