イチロヲ

X線の眼を持つ男のイチロヲのレビュー・感想・評価

X線の眼を持つ男(1963年製作の映画)
4.0
透視能力が得られる点眼薬を発明した医師が、その能力を医療の現場に役立てるべく、高リスクの治験を自身の体でおこなってしまう。超能力がもたらす悲劇を描いている、サスペンス・スリラー。

目前の物体を透かすことができる超能力をテーマに取っている作品。主人公の一人称視点にサイケな娯楽性が盛り込まれており、周囲の人間が全裸になってしまうエロ描写を楽しむことができる(ただし、生真面目な主人公は裸の女にムラムラしない)。

導入部が過ぎると、路頭に迷った主人公が見世物小屋の興行主と出会い、カオス状態へと発展。主人公は能力を医療に利用するため俗物根性を捨てるのだが、副作用により視界が変化(まぶたを透かしてしまう)するうちに、俗物と紙一重の状態に陥ってしまう。

「良かれと思ってやったことが、自分を苦しめてくる」という、不条理ドラマの王道パターン。完全に"バッド・トリップ・ムービー"の領域であり、ラストの逃避行シークエンスに、切なさとやるせなさが集約されている。
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