emily

ハピネスのemilyのレビュー・感想・評価

ハピネス(1998年製作の映画)
5.0
 アメリカ・ニュージャージ州郊外に暮らすごく普通の中流家族の三姉妹。長女トリッシュは精神科医の夫と子供達と幸せな日々を過ごしているが、夫は小児性愛者。次女ヘレンは美人で売れっ子作家だが、作品のリアリティを求めレイプされることがどうゆう事か知りたくなり願望を高まらせる。三女ジョイは男運がなく、今回好きになったのは自身の性とでロシア人男性。しかも口車にのせられ・・・

 3姉妹を中心に彼女たちに係る人々が、確信的な音楽とカラフルな不釣り合いな色彩を纏い、ブラックユーモアの渦の中で喜劇を繰り広げる。会話には独特の間が取られ、行動と頭が一致していない、ひとくくりにするとただの変人の集まりになってしまうが、それぞれのエピソードには少なからずとも共感できる部分があるはずだ。物語はゆっくりしかし人と人とがかかわりあうことで、確実に思いもよらない展開に転がっていく。しかし繰り広げられるのはほんの狭い世界で起こってる自分勝手な人物達が、些細な幸せを求め同じところを行ったり来たりしてる物語である。他人からみたら滑稽であるが、至って本人たちは真剣である。そこから何の成長することもなく、同じところで幸せを奏でる。

 ジョイが歌う「ハピネス」のか細くそれでいて癖のある歌声が全編をさらに異様な空気に包み込む。三姉妹のエピソードに加え、夫や両親、係る人々のエピソードを程よい頃合いで切り替えていき、その先が気になる気持ちのまま次のエピソードでは物語が動いたり動かなかったり、良い意味で観客を裏切りながら惹きこんでいく。悪質で陰湿なブラックユーモアの枠組みの中で、気が付いたらそれぞれのキャラクターの情けなさに共感し、そのぶれない人間性に賞賛を覚えるようになる。

 求めても求めてもそこから外へ出れるわけではない。幸せを自分の外に見つけようとする限りどこにも見つからないのだ。ない物を求め、知らぬところで自分を過大評価している自分が居る。ジョイがふとした時に言った言葉がすべてである。姉や家族、子供たちがいて幸せだと。大事な物は片手に収まるほどの少ない物である。それを抱きしめ幸せを感じる事で、人は幸せになれるのだと。。
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