リコ

アイスクリーム・コネクションのリコのレビュー・感想・評価

3.0
【氷菓マフィアたちの熱き抗争/グラスゴー死闘篇】

町の人気DJディッキーは、クリスマス前に妻に逃げられ傷心のさなか。
ところが、"バニー印"のアイスクリームトラックが、対立する"マッコール・アイス"に襲撃を受ける現場を目撃したことから、アイスクリームマフィアたちのシマ争いに巻き込まれ、あげく二組の仲介役を務めることになる…

「ローカル・ヒーロー」で映画賞を席巻した、スコットランド映画界の雄ビル・フォーサイスが、その余波をかって作った一作。撮影クリス・メンゲスと音楽マーク・ノップラーも続投、主演のビル・パターソンは後に『フリーバッグ』でヒロインの頼りないお父さん役を務めることになる。

"熱き抗争"とぶちあげてみたが、まあそこはローカル・ヒーローの監督なので、マフィア映画の枠を借りつつ、アイスクリーム屋の縄張り争いをほのぼの淡々と(!)とつむいでいく。
ゴッドファーザーよろしくイタリア系のドンと三人息子が出てきたり、何故か主人公がいく先々でサインを求められたり、急にジャーナリスト魂を発揮してレコーダー片手に町へ飛び出すも、やることなくて逃げた嫁への泣き言を録音したり、あちこちにちょっとずれた笑いが潜んでいる。何より、争いの火種がアイスクリームなのだから、ハードな展開になりようがない。血の代わりに、ラズベリーソースが飛び散る世界なのだ。

淡々とした起伏のあまりない展開や、デッドパンユーモアは『ローカル・ヒーロー』や『グレゴリーズ・ガール』といった田舎の風景には映えたかもしれないが、今作のグラスゴー(たぶん)の都市風景では、少しまだるっこしく感じた。(ただ、クリス・メンゲスの撮影は今回も気合いが入っている。倉庫内シーンの美しさたるや!)
それこそ、辺境な海辺の町にアイスクリームマフィアが暗躍している…という展開のほうが意外性があったと思うのだが。
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