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裏切りのサーカスのshinのレビュー・感想・評価

裏切りのサーカス(2011年製作の映画)
4.0
スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレ原作の、東西冷戦スパイ映画。

舞台は冷戦下のロンドン、薄暗く寒々しい景色の中、引退したスパイマスターであるスマイリーが、MI6中枢に入り込んだソ連のモグラを追い詰めていく。

ストーリーは淡々と進み、同じ「スパイ」映画である007のような派手なシーンは殆どない。特に、敵の姿が全くわからないのが特徴的で、悪の組織が対手であれば、主人公とその組織との関係性を追えばストーリーは理解できるし、力を入れたり抜いたりしながら自由に見ることができると思う。
一方、裏切りのサーカスは、敵の具体的な姿が全くわからない。カーラというソ連最強のスパイマスターの存在が語られるが、その具体的な姿や活動は描写されず、スマイリーが見つけ出すスパイも最後まで誰か、どこにいるのかわからない。
そのため、物語上で何が起きているかを追いかけるのは容易ではないし、話の盛り上がり、注目シーンを見つけるのもかなり難しい。実際、最初見たときは全然話に追いつけなかった。

結局、ネットでネタバレ解説を確認し、話の構造とポイントを掴んでからもう一度見た。そうしたら、これがめちゃくちゃ面白い。一見、物静かでパッとしない印象のスマイリーの凄み、一流工作員であるプリドーのかっこよさとその悲劇、ヘイドンとの友情…こんなに各登場人物が立っていて、一つ一つのストーリーが見ている側の想像や感情を動かす。

あと、スマイリーたちの着ているスーツが本当に決まっている。どうやら衣装はポールスミスが監修しているらしい。道理でカッコいいわけだ…。スーツ姿のカッコいいおじさんたちを2時間見ているだけでも結構楽しいと思う笑

一度見てイマイチだなと思うべからず。一通り勉強してからもう一度、二度観るともっと面白くなるスルメ映画です。
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