りんごチャン

ある女の存在証明のりんごチャンのレビュー・感想・評価

ある女の存在証明(1982年製作の映画)
3.5
アントニオーニ愛の不毛3部作に加えたくなるような一面の不毛色(実は“欲望”しか観ていない)。謎な視点のオープニング、暗闇、そして濃霧の中の逃避行から漂う不確実性。主人公の男が映画監督という設定からまるで巨匠の悩ましい追体験みたいな作品。

女に事欠かないけれど女に上手くいかない様子の主人公。本業の映画に出演させる女優まで決まらないとか徹底した不毛ぶり。理想の女優としてなのか、窓にルイーズ・ブルックスのポートレートを貼るシーンがとても印象的。

上流階級の人たちとのパーティーで刺さるような白い眼を向けられる主人公。送られる視線の配置具合が嫌味さ倍増でこれまた印象的。

出産の写真や妊婦の登場、そして主人公にかかわる女たち…タイトルが示すように、何か女性に対する痛切な感情を受け取った感覚。