むさじー

にっぽん泥棒物語のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

にっぽん泥棒物語(1965年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

<他人のために! 泥棒が説く人の道>

主人公の義助はニセ歯医者の傍ら、土蔵破りの裏稼業を持ち、シャバと刑務所を往復しながら暮らしている。
だがある時、大事件の犯人らしき者たちを目撃したことから、冤罪晴らしの証言を求められ、自分の悪事がバレてしまうのを恐れて、証言すべきか迷う。
他人のために証言する善行をとるか、黙って自らの安寧と幸せを守るか。
本作は、戦後のミステリー事件の一つ「松川事件」をベースにして、冤罪とその背景にある権力や闇の部分、あるいは戦後混乱期の貧困や世相をフィクションの形で描いている。
だが全体を包むのは、憎めない泥棒を主人公にした喜劇で、笑いと涙の人間賛歌の中にそれら当時の社会問題をうまく取り込み、重くなり過ぎないようバランスをとった結果、骨太なエンタメ映画になったと言えるだろう。
クライマックスの法廷シーンでは、爆笑しながら、素直に感動した。
それまでの重苦しかった空気が一変し、本来の喜劇映画に戻った感がある。
主人公が思い悩んだ重さがあればこそ、吹っ切れて生まれた爽やかな可笑しさがあって、映画を後味のいいものにしている。
いま観ても社会派喜劇の傑作だと思う。
また、傑作たらしめたのは三國、伊藤ら個性派俳優の演技力に依るところも大きい。
むさじー

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