けーはち

ポッピンQのけーはちのレビュー・感想・評価

ポッピンQ(2016年製作の映画)
3.3
中学卒業を間近に控え、将来への悩みという共通点を持つ5人の少女。異世界「時の谷」に召喚され、世界の崩壊を救うべく、心をひとつにしてダンスを踊らなければならないことに(?)──東映アニメーション60周年記念、爽やかなガール・ミーツ・ガール青春ファンタジー!

★卒業する少女たちへ

東映アニメーションと言えば、今の基幹タイトルは女児をターゲットにした「プリキュア」シリーズ。本作はその直系、プリキュアを卒業した「少女」アニメ。作品のテーマもまたそのものズバリ「時間」と「卒業」。

卒業は寂しい別れの時ではあるけれど、悲しいだけの通過点じゃなく、また、始まりでもあり、過去は変えられないし、立ち止まっていたら未来に向かえないから前を向いて進もうと、そんなベタだが芯の通った応援歌。

キュートで柔らかな女の子のデザインは、気鋭のイラストレーター黒星紅白によるもの。実に今風の「萌え絵」的だが、色絵の傾向として彩度は低くけばけばしくない東映動画的クラシカルさと色気をも兼ね備えている。新時代のクラシックになるのかもしれない。

★ダンス、ダンス、ダンス

「ダンスで世界を救う」──荒唐無稽なファンタジー。とはいえ、歌って踊るアイドルグループの増加、学校におけるダンス必修化、ダンスやアイドル自体をテーマにしたアニメも増えた。プリキュアのエンディングではモーションキャプチャーしたCGキャラが踊る形式になってしばらく経つ。

「時の谷」では幼稚園児のスモック服のような装束を着せられ、ダンスをうまく踊るとまさに『プリキュア』あるいは少し前の東映アニメーションの看板だった『セーラームーン』を意識した風の肌を出したコスチュームに変身する。蛹が蝶になるような二次性徴、幼児期から少女期への心身の移行を示している。運動が肉体の成長を促すというのは、いかにも教育面の配慮が行き届いている、奇をてらったようで真摯な作り。ダンスのモーションにも妥協はない。

プリキュア的なバトル・アクションもある。少年向けのアクションものでは有り触れたレベルではあるが、プリキュアからは進化し個々人の個性にリンクした武器や能力を活かした魅せるものになっている。

★続編……?

話はベタな上にメッセージを詰め込みすぎで、とっ散らかるし、CGキャラクターのクォリティはさすがにディズニー・ピクサーあたりに比べると塩っぱいものだが、視聴感としては青春応援歌らしい爽やかさがありOK。

ただ、意味ありげなセリフを残したまま悪役が消えたシーンがあるかと思えば、案の定、エンドロール後に続編を匂わせるどころではない予告(!)。「卒業は別れの時だけど前を向いて行こうよ」と言った舌の根も乾かぬうちから、「同じメンバーでまた集まって続編」と。商業的要請では致し方ないところか。