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ローマ、愛の部屋のemilyのレビュー・感想・評価

ローマ、愛の部屋(2010年製作の映画)
4.1
スペイン女性のアルバとロシア人女性のナターシャは、異国の地ローマの夜の街で出会う。半ば強引にアルバに誘われ、ナターシャは彼女の泊まっているホテルの部屋で、夜を過ごすことになる。はじめは警戒していたナターシャだったが、徐々に心を開き、お互いの過去を打ち明け溶け合うように重なりあっていく。

ローマの夜の街は街灯が少なく、暗い。上から二人の女性の会話をとらえ、柔らかいオレンジ色の光に包み込まれる。異国の地で出会う、国籍の違う二人は英語で会話する。部屋には一面に絵画が飾られており、オレンジ色のライトが優しく二人を照らし上げる。閉鎖的なローマのホテルの一室であるが、その雰囲気はまるで絵画の中の世界のように、ゴージャスでレトロ感が漂う。絵画の中に収められた神話と交差させるように、二人は探り探り自分の話を始める。英語の会話の中に、お互いにわからない自分の言語を混ぜてくる言葉の響きも効果的にロマンスを盛り上げてくれる。

二人の美しい女性の肌の色に合わせたガウンのコントラスト、ベランダの外から二人をとらえたり、焦点を絞りぼやけた背景に片一方を配置させることで引き出す映像美や、ベランダの花や視覚を効果的に使った、一つの部屋での二人の距離感、二人の鍛え上げられた肉体美、光と影を巧みに操り、美しい映像とともに、幻想的な二人の空間を映し出す。

衛星写真を使ってお互いの住んでる場所を見る。そこから過去や抱えてる物の話へ、知り合ったばかりの人への警戒と、知らない人だからこそ話せてしまう絶妙な人間の心理をうまく操り、現実と嘘と神話を交差させながら、ここでしか成しえない二人だけの世界を官能的かつ芸術的につづる。

イタリア人のボーイに対してスペイン語で会話するアルバ。イタリア語とスペイン語は非常に似てるので、なんとなくわかってしまう通じてしまう感じ。でも違う言葉だから大胆にもなれる。相手が分からないから本音が出る。嘘と本当と神話や幻想だけでなく、4つの言葉を操ることでの駆け引きが見事で、シンプルなストーリーにしっかり深みと立体感をもたらしている。

目を閉じてテーブルの上で手が重なりあったら、一緒に歩んでいきましょう。何かに運命をすがりたい。しかし二人の手は交わらない。うまくいってほしいと思いつつ、観客もわかっているのだ。これが一夜の夢でしかないこと。いや、そうすることで二人の愛は美しいまま永遠のものになると言うこと。

そうして二人が重なり合うバスタブの美しいシーンへと流れていく。ジャケ写にもなってる、二人の美しさが最大限に引き出された幻想と残酷ののちに来る上から捉えた最高のシーン。
そうして二人がこの部屋に残した証は、きちんと外からも残っているのだ。小粋なラストが石畳に溶け込んで、感傷的ではなく、笑顔で終われるところもいい。
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