jigsaw

戦場カメラマン 真実の証明のjigsawのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます


「あまりにも残酷な真実」


久しぶりに印象的な戦争映画を観た気がします。
残酷描写はそう多くはない。でもそれが逆に妙にリアリティに溢れ、戦争の悲劇性を露骨に見せつけてくれる気がしました。

主人公マークは戦場カメラマン。同業者の親友デビッドと共に戦争の一部始終をカメラに収めるべく戦地を巡る。
今回もかねてから熱望していた様なとびきりの被写体に出会う為、2人は愛するそれぞれの妻(デビッドの妻はまもなく出産)を置いて旅立つ。

無我夢中で乱戦の中へ飛び込みシャッターを押し続けるマークの無謀さに危険を感じて罵倒するデビッド。
キャンプ地では、顔見知りとなった軍医が診る悪臭こもった療養地の悲惨さまでも目の当たりにする。
激痛に呻いて質素なスペースに横たわる人々。酷い傷口には無数の蛆が蠢き、肉片を滴らせ、痛みからの解放を切望している中を回診する軍医。その手には2色の細長いタグ状の紙。
ブルーは瀕死。手の施し様が無き患者に。
イエローは回復見込みあり。充分な治療は状況的に不可能ながら、ほぼ自然治癒に頼る事で治る患者。
ブルータグを置かれた患者達には、軍医がせめてもの救いをと、頃合を見て銃殺。

それでも紛争は続く。
目の前で無数の銃弾が行き交い、人が地に倒れ、地は赤く染まる。
呻き、悲鳴、嗚咽、苦痛、助けを求める表情…。

そんな光景を前に、親友デビッドは帰還を決意する。待つ妻の元へ、まだ見ぬ我が子の元へ。
そんな親友を理解しながらも、更なる被写体を求めて残留を提案するマーク。
押し問答が繰り返され、1度は折れてマークに従うデビッドだったが。
ついには独りその場を後にし、30kmの戦火の道のりを歩いて帰路を目指す決意をするデビッド。そんな背を見つつ、次の戦地を目指し背を向けたマーク。

……気付けば見慣れた軍医の顔が自分を診ている。虚ろに開く瞳で捉えたのは、痛々しい自分の身体。見下ろす軍医の姿。
夢なのか、何なのか、幾度となく脳裏や目の奥で蘇る濁流。鮮やかな真紅の花弁。
何かがフラッシュバックする…何かが。

幸いにも大怪我から奇跡の回復を経て、妻の待つ自宅へ帰還したマーク。
彼が抱えたのはPTSD。あまりにも惨い記憶を封印してしまった代償だった。
戦地の悲惨さ、戦争の非情さを知っている彼だからこそ、抱えてしまった闇。

やがてそれは妻や妻の祖父の支えで次第に明らかになっていく。
封印してしまった事実。何よりも伝えたかった筈の事実。伝えなければならなかった事実。
言えなくて、言えなくて自責を積み重ねた日々。


ラストにマークが握りしめていたブルーとイエローのタグ。
これは自責に離別を決心した想いの表れか、それとも生死に別れた自分と……。
本当の意味での弔いをしたのかもしれない。


戦場の悲惨さと、マークの痛々しい心情が印象的な作品でした。
jigsaw

jigsaw