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ミラーマスクのsmithmouseのレビュー・感想・評価

ミラーマスク(2005年製作の映画)
4.1
No700
”女の子の自分探し”
言葉にすると無味乾燥な味気ないコンセプトに奇抜なイマジネーションと細密なファンタジーを書き加え出来上がったのは悪夢の様な美しさを持つ動く絵本。

「誰かの世界を壊さなきゃ家出はムリだもの」
サーカス団長の1人娘で自身もジャグラーとして働くお絵描き少女ヘレナ。ある日母親が病に倒れ、それが自分のせいと思い悩んでいた夜、部屋の外が別世界に繋がっていることに気づく。

ごちゃごちゃな世界なのに伏線はちゃんと回収されるし、境界のこちら側と向こう側の対比という全編通したテーマが貫かれている。

ヘレナが生み出した世界でのスチームパンクみたいな奇妙なオブジェ状のクリーチャーや人間とのユーモラスな掛け合いは作り物感は無く傑作童話を見ているかの様。
強烈なイメージ同士が集合してもその全てがそれぞれにちゃんとした存在感が感じられる仕上がり。

技術さえあればこれより視覚的、聴覚的に優れたものは作れるかもしれないが、この膨大なアイデアと仄かな狂気と毒に満ちた独特の世界観はこの映画でしか味わえないオリジナリティーだと思う。
植木鉢人間の歌う”クローストゥーユー”が流れる着替えシーンは妖しさと美しさに満ちててこの映画で一番お気に入りのシーン。

子供騙しどころか大人も騙すファンタジー映画。
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