みなりんすきー

SOMEWHEREのみなりんすきーのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
3.3
『俺は空っぽの男だ 何者でもない』

『しばらく家を空けるわ クレオは2週間キャンプよ 送り届けて 少し時間がいるの』

『傍にいなくて ごめん』

”ベイビー 僕を君のテディベアにして
首に鎖を巻き どこへでも連れてって
君の大事な テディベアにして
毎晩 君の隣で 眠りにつかせて
髪をなでて ギュッと抱きしめて”



■ あらすじ ■
ハリウッド映画スターのジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)は華やかな生活を送りながら強い空虚感を覚えていた。そんなある日、前妻と同居する娘・クレオ(エル・ファニング)の面倒をしばらく見ることになり、映画賞の授賞式のためクレオを連れてイタリアへ向かうことになるのだが…


■ 感想 ■
『SOMEWHERE』
(『Somewhere』)

ソフィア・コッポラ監督作のドラマ映画。
最近個人的にソフィア・コッポラ祭りが開催されている(笑)『ビガイルド 欲望のめざめ』、『ヴァージン・スーサイズ』、『ロスト・イン・トランスレーション』…どれも良かった。個人的にはヴァージン・スーサイズがかなり刺さった。

娘役でエル・ファニングちゃんも登場。圧倒的可愛さ。どこまでも瑞々しい・・・今はすっかり美人さんになりましたよね。あどけなさはまだ残っているけれど、そこがいいよね。

さて、今回のソフィア・コッポラ監督作は。
やっぱり、彼女の撮る映画はいいですね。スローな空気感。あくまでどんな場面もとことん現実的。嘘偽りのないリアルな時間がそのまま流れていく。ココ!という盛り上がりを作るためのBGMや効果音なんて一切ない。なので、観る人によっては全体的に単調で退屈さを感じてしまうかもしれないんだけれど、やっぱり私はこの雰囲気が肌にあうなぁと。

ジョニーの感じる”圧倒的な孤独・虚無感”の描き方がものすごく良い、上手い。自分しかいない部屋でただボーッとして過ごす時間も、何とか虚無感を埋めようと美人なポールダンサー呼んだり取っかえ引っ変え女と夜を共にしたりしても、結局ずっと孤独なんだよね。そこには何も無い、何も生まれやしない。寧ろ、埋めようとすればするほどどんどん孤独感は強まっていく感じ。
一人の時間のあの静けさ、無の感じは、多分一人暮らししたことある人ならすごく共感できるんじゃないかな。私も一人暮らしが長いので、すごく「あ〜〜分かる、すっごい分かる…」と深く共感して何度も頷いてしまった(笑)

最初に少し歌詞を載せたんだけれど、途中でジョニーとクレオが2人で聴く歌がすごくいい。あの歌は、きっとクレオが父親であるジョニーに思っていたことなのではないかなぁと。クレオはあの歌を聴きながら、心から安心しきった様子でジョニーの肩に顔を埋め眠りにつく。愛しいパパを想うように。ジョニーもクレオも、きっと救われたかったんだろうなと。

最後のシーンで、ああ、きっともう彼は大丈夫だ、と思えた。ホテルを出て、あの澄み切った瞳が見つめる視線の先には、間違いなく今までとは違う希望の光が満ちている。