サマセット7

ザ・レイドのサマセット7のレビュー・感想・評価

ザ・レイド(2011年製作の映画)
3.9
2011年公開のインドネシア映画。
監督は「ザタイガーキッド」「ザレイドGOKUDO」の英国出身ギャレス・エヴァンス。
主演はシリーズ通じて「ザタイガーキッド」「ファイティングタイガー」などのイコ・ウワイス。

新人SWAT隊員ラマ(イコ・ウワイス)が属するSWATチーム出動!!
ターゲットは、30階建ての高層ビルを支配する麻薬王!!!
ビルは犯罪者に部屋貸しされており、難攻不落!!
そして麻薬王の幹部には、マッドドッグ(ヤヤン・ルヒアン)と呼ばれる格闘技の達人がいた!!
秘密裏に侵入したチームだったが、強烈な反撃を受け、絶体絶命のピンチに陥る。
ラマは麻薬王を捕らえ、生き延びることができるのか???!!!

世界的に高い評価を得たインドネシア映画。
撮影のきっかけが、イギリス出身の監督が、インドネシアで現地の武術シラットと出会い、その使い手たちを俳優に起用して映画を撮ろうと思った、というもの。
同監督の「ザタイガーキッド」を経て、より完成度を高めて勝負に出た作品が、今作である。
主演のイコ・ウワイスや、敵役ながら凄まじい存在感を見せるヤヤン・ルヒアンは、いずれも元々は武術家である。
ごく低予算で作られているが、新鮮なアクションが話題となった。

ストーリーはシンプルで、犯罪者だらけの高層ビルという限定空間での、SWAT対犯罪者集団の戦闘を100分強で描く。
ジャンルは、アクション映画だが、マーシャルアーツ映画やサバイバルスリラー、バイオレンス映画などの要素も含む。

今作の見どころは、とにかく、圧倒的な格闘アクションである。
序盤、これはこれですごい迫力の銃撃戦がかなりの尺を取って描かれるが、弾が切れた後が本番である。
ナイフ!マチェーテ!!トンファー!!!といった近接武器戦闘。
そして、武器すらなくなった後は、素手での格闘!!
シラットという武術に由来するのか、格闘アクションのスピード感は、圧倒的にすごい。
身体をはった暴力描写も素晴らしい。

全編すごいが、中でも、明らかに只者でない男が、そこにいる。
マッドドッグ!!!!
小柄。
長髪。
ムチのように絞られた体躯。
何より、その素手格闘を流儀とするそのスタイル!!!
圧倒的なスピードと体捌き!!!

獲物を銃で撃てる時も、ヤツはそうしない。
俺の流儀は、素手で殺すこと。
そう言い切って、あえて優位を捨てる!!!
SWAT隊長ジャカとの一騎打ちは、その開始の仕方も含めて、本作中盤の白眉である。
終盤の実質ラストバトルの幕開けも、シビレルゥゥ!!!!!!!!!!!!!!

演じるヤヤン・ルヒアンは、「ジョン・ウィックパラディアム」でもシノビ役で登場して、凄まじいアクションを見せていた。
完全なるリアル武術家である。
今作のアクションを見れば、キアヌも抜擢したくなるというものだろう。

複雑なストーリーはないものの、潜入、発覚、応撃、逃走、対決といった各パートは、相当丁寧に作られており、ほぼ緊迫感を失わせない。
大怪我を負った隊員をどこに隠すか??といったあたりのシーンなど、なかなかのサスペンスになっている。
素手格闘も導入が丁寧なため、リアリティを失っていない。

今作のテーマは、インドネシア発で、見たこともないアクション映画を作る!!だろう。
創意工夫と肉体が繰り出す練達の技が、このテーマを実現している。

終盤の展開は、色々な意味でなんだかなあ、となること必定だが、そこまでの満足感が高いため、許容範囲か。

格闘アクション映画に新鮮な風を吹き込んだ、インドネシア発の快作。
101分という尺もちょうどいい。
日本人キャストも登場する続編も観るのが楽しみだ。