Kuuta

LOOPER/ルーパーのKuutaのレビュー・感想・評価

LOOPER/ルーパー(2012年製作の映画)
3.5
前半のSFノワールは、映像はちょこちょこカッコいいが話は単調。後半の西部劇は楽しかった。

シネフィル的なオマージュは山ほどあるのだろうが、メインはシェーン×ターミネーターか。銃の射程の違いや机を盾にするアクション等々、西部劇愛を感じる。「切り株と格闘」し、田舎で自衛のために戦う。孤独なガンマンが暴力のループを自分の中に封じ込め、時代から消える。

寿命という時間制限の中で「今」を楽しもうとする過去のジョー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)。スピードラーニングやってるのがかわいい。

コーヒーミルクの渦、タバコの煙、ヘンテコな雲、トウモロコシ畑=複数の因果が絡み合い、単純な物理で計算できない複雑系。シドの未来が複雑系に消えるのを食い止める話。

どれだけ対策を講じても、未来は無限の要素で作られているから容易に変わらない…という仕組みをくどくど説明せず、「ハゲる頭はハゲる」見た目で示す手際に感動する。髪を撫でる動作を映画のキーにするライアン・ジョンソンの悪意。「タイムトラベルの説明なんてさせるな!」とブルース・ウィリスに強めに怒らせる心意気、ポール・ダノのあんまりな扱いも良し。

映画的な乱暴さが随所にプラスに働いている。ジャンプカットで描くタイムトラベルや拷問の見せ方は新鮮。序盤の一人暮らしの雰囲気や編集はヌーヴェルバーグ?妻の記憶が失われていってエミリー・ブラントの顔しか浮かんでこない、まずい、の場面は切ないけどちょっと笑った。

未来のジョーの妻は子宮を撃たれるが(未来で殺人出来ないんじゃなかったっけ?)、セックスでジョーの子供は未来に残るため、ジョーはループを抜け出せる。ベッドシーンの唐突さも良い。自分が子供を残せるかどうかもまた、理屈を超えた複雑系。そんな曖昧さの中で未来は続いていく。割と真理を突いている気もする。70点。
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