April01

白いカラスのApril01のレビュー・感想・評価

白いカラス(2003年製作の映画)
3.5
ピュリッツアー賞をはじめ幾多の賞を受賞している作家フィリップ・ロス、彼の作品の1つでありアメリカ3部作の第3弾、人種問題を独特の切り口から描いた小説「ヒューマン・ステイン」を原作として、「クレイマー、クレイマー」のロバート・ベントン監督が映画化。
原作を先に読んでしまうと本作はおそらく物足りなく感じてしまう。それくらい原作では登場人物の複雑なバックグラウンドが情感豊かに描かれている。
とはいえ、アンソニー・ホプキンス演じる主人公とニコール・キッドマンとの艶めかしいシーンも含めた関係性は切なく、自分の物語を書くよう依頼される ゲイリー・シニーズ演じる作家の第三者視点が観ている自分と気持ちが重なるようで、話が進むにつれ驚きと緊張感で心が揺れる仕掛けになっている。
ベトナム帰還兵で、堕ちていく元夫を演じるエド・ハリスも安定の演技。
生まれ持ったアイデンティティにどこまで束縛されるのか、そこから解放されようとすることは罪なのか、上昇志向で自分自身を裏切り偽っても虚しさと哀しさがあるだけ。だから同じ心の痛みを持つもの同士が惹かれ合う。
物語を創作するのが作家ではあるけれど、現実の世界は信じられないような不思議な物語に溢れている、流れて時には淀んで人間にへばりついているような物語を掬い取って形にすること、作家とはもしかしてフィルターではないかと、この作品を観て原作を読んで、関係ないことを考える。
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