橘宏樹

パフューム ある人殺しの物語の橘宏樹のレビュー・感想・評価

4.7
充実の耽美。やっぱ映画はここまでイカれてくれないとね!僕的映画史に残った。

特にクライマックスが素晴らしい。ここまでクライマックスに期待させてその期待を乗り越えて来れる映画はなかなかないでしょう。絵面もルネサンス期の最後の審判そのもの。折り重なる圧巻の肉感。

最後の審判で、美は良識に勝利する。そしてそのことを、宗教的な窮屈さと貧困と退屈による鬱屈した18世紀ヨーロッパは、心の底では待ち望んでいたかのように、喜び勇んで瓦解する。

悲劇も報いも幸せも、何もない。ただ美だけが虚無の底に香っていた。そこに一心に手を伸ばした命があったというファンタジーに喝采を。
橘宏樹

橘宏樹