きんゐかうし卿

Playbackのきんゐかうし卿のネタバレレビュー・内容・結末

Playback(2012年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

 

自宅(CS放送)にて鑑賞。今時珍しい全篇モノクロ──今の時代、撮るのも、現像等その後の処理も、遥かに手間で技術を要する手法。一言で云えば、ノスタルジックなファンタジーだが、圧倒的に画面が佳い。やや硬い目乍ら、隅々迄行き渡った光回り等、よく撮れている。この画面は、行き詰りから再起を図る過程に遭遇する不思議な物語とマッチしており、ややありふれた展開や細かな粗を忘れさせてくれる力を持つが、巧くはぐらかされた様な思いも残る。何はともあれ、スチル、ムービーを問わず、画像や映像に興味が有る人は必見。85/100点。

・何気なく登場するスケボーや結婚式の騒動等、展開と共にどこか違った意味や輝きを感じさせる。序盤を繰り返す様な終盤でも、その変化が実感出来、清々しいカタルシスを得られる。全篇、奇妙な魅力に満ちているが、ただ感じるだけの作品でない事が功を奏した。欲を云えば、この監督のしっかりしたストーリーテリングのも観てみたくなった。

・脚本を兼ねた監督が宛書で作ったのかと思わせる程、正に適材適所と云った魅力的なキャストが配されている。“ハジ”の村上淳の表情は進行と共に内面をよく映しており、“ホジ”の渋川清彦も忘れ難いし、テイ龍進も如何にもそれっぽく、他にも書き出すとキリが無くなる。中でも菅田俊の“エンドウ”がラスト近くで浮かべる顔つきの変化が深く印象に残った。

・ロケの大半は、震災の爪痕が色濃く残る水戸市で行われたと云う。このロケ地において、画面でも見てとれる程の凹凸道でのスケボーシーンがあり、この悪条件ではさぞや村上淳も猛特訓したのかと思いきや、監督曰く実は村上自身、若かりし頃、かなりスケボーに打ち込んでいたらしい。ここ10年以上、乗っていなかったとの事だが、昔取った杵柄、流石の身のこなしで堂々としたものがある。道理で……。

・鑑賞日:2017年3月29日