このレビューはネタバレを含みます
そうか
船内コックにジェラール・ドパルデューを使ったのはそういうわけか。
物語りを語るとはどういうことなのか。
現実世界の不条理、過酷さ ゆえにこそ希望を失わないためにひとは物語を必要とする。
そこで語られた物語が真実かどうかなど無意味。
生きていくために人は物語を必要とする。
ちょっとジュブナイルふうの遭難ものに見せかけて、確信犯的に重層的な作り。
終盤まで普通に遭難ものとして見てました。救命艇の残骸でイカダを組み上げていくところや、サバイバル術なんかに目がいった。。でもちょっと船内の汚れが少ないなあ、シマウマやオランウータン、ハイエナ達の死骸はどうしたのか。リチャード・パーカーさんがおいしく召し上がったのかなと思ってたが。。これ自体が仕掛けだった。
これは、、、なんと宣伝泣かせの作品か。
見終わってからこれが文部省推薦なんて正気かと思ったが、でもラストでその思いは変わった。
虎との別れがどうしてあんなに苦しいのか
自分の中にあった純粋さや暴力性やそんなものとはもう二度と会えないから
大人になってしまったから
うん、ジュブナイルの本質をとらえている。そりゃ子供には子供の見方があるだろう。でも『ドラえもん』映画だってほんとは親たちに向けて作られているんだし。
それにしても李安の映像センス。将来、脳内にチップが埋め込まれいつでも超高精細映像を呼び出せるようになったら、死ぬ前にあの波一つない凪の海、星空や海中の圧倒的なマジックリアリズム世界に浸れるように必ずやセットしておきたいと思います。
⇒ミニョネット号事件
⇒ひかりごけ映画ベスト級
(2019.7)