ryodan

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のryodanのレビュー・感想・評価

5.0
2014-06-12

A・リー監督作。
全くの予備知識なしの鑑賞。トラと人間が大海原で漂流する話。
ビジュアルに重きを置いた作品で、「ゼロ・グラビティ」がオスカーを獲ったのも、この作品のおかげかも。CGと分かっていても、トラの動きは緻密で繊細。そしてこの作品の何がスゴイかって、そんな視覚効果を忘れるほどの問いかけ。何度も何度も問いかける。「あなたはこの物語をどこまで信じますか?」寓話性が強ければ強いほど、作品への視覚効果は必要不可欠であり、より鮮やかな視覚効果ほど、作品が際立ってくるんですよね。全てが計算されている。もう一つ。人間が創った神があるとすれば、また神の意思と呼ぶものがあるとしたら、地球はそれら全てを否定してしまえる力を持っているのではないか。地球には優しさなんてない。人間の宗教観など、ものの数秒で変える事ができてしまう。その敗北感たるや、半端ではない。震災時の津波の映像を思い出せば、すぐに分かるでしょう。あそこに神がいたのでしょうか?神の意思を感じたでしょうか?残るのは残酷な現実だけです。そして救命艇の中でも、残ったのは残酷な現実だけでした。
もし神がいるとしたら、そんな残酷をおとぎ話に変えてしまえる人間の想像力が、神から与えられたものとするならば、その人間の中にこそ神がいるのかもしれません。それは地球をもってしても奪われないもの。そう信じたいです。
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