まーしー

マーサ、あるいはマーシー・メイのまーしーのレビュー・感想・評価

3.0
カルト集団の生活拠点から脱走し、実姉の家に転がり込んだ一人の女性。
彼女にとって新生活が始まるも、現実と過去が倒錯していく——。

カルト集団の生活と脱走後の生活を交互に描いた本作。
一種の洗脳の怖さを思い知らされる。
集団の詳細は明かされない。ただ、「女性の食事は男性が終わってから」「指導者に自身の性を捧げる」など、男尊女卑・家父長的な社会であることは間違いない。
私など外部の人間からは、その集団の良さが解らない。しかし、心に何かしらの弱さや隙がある人にとっては、救いの場所として映るのだろう。

ヒロインがなぜカルト集団から脱走したのかは曖昧。ラストの解釈も観客任せ。
その辺りに消化不良はあるものの、不思議と印象に残る作品だった。
新しい生活が始まっても過去の影に怯えるほど、洗脳の影響力は大きいのだろう。

本名はマーサながら、カルト集団内ではマーシー・メイと呼ばれるヒロインを演じたエリザベス・オルセンの演技が光る。
抑揚のないストーリーながら、決して飽きることがないのは、彼女の演技に依るところが大きいだろう。
中でも、脱走後の情緒不安定な様子を見事に体現していたように思う。

娯楽性は少ないため、観る人によって評価は分かれるだろう。
エリザベス・オルセンがお好きな方やヨーロッパ映画がお好きな方には、一見の価値があるかも知れない。