空海花

空気人形の空海花のレビュー・感想・評価

空気人形(2009年製作の映画)
3.5
“心を持つことは、切ないことでした”

何度も繰り返されるその言葉。

うん、そうだね。
台詞の度に、心の中で返事をしてしまう。

ラブドール、のぞみ が心を持ってしまう。
花を愛で、人を愛し、可愛い女の子になっていく自分に心を躍らせて。

でも、自分のアイデンティティはラブドール。
誰かの代用品。
それは人間も時折陥る思考。
みんな同じようなものだと彼らは言う。
心にぽっかり穴が空くとき
まぁ、そんな気にさせられるけれど。

是枝裕和監督作品。
確かに、こういう作品を作るとは意外だ。
哀しいファンタジーで
ある種、哀しいホラーだ。
ならばヒーリング・ホラーに振り切ってほしいところだけれど、この人はそうはいかない。

でも、そういう作品なのだろうか。
みんなそうだと言われたら、
安心するだろうな。
でも、空いた穴を塞ごうと、
もがく姿こそ人間らしく愛おしい。
慰め合うのも悪くはないけれど。

みんな、そう。自分もそう。
そんな言葉、
あんまり無責任に言うべきじゃない。
彼女が嬉しそうに見つめる
ガラス玉のような言葉だ。
イミテーションの指輪なら
代わりにしてもいいけれど。
ラストの予感…
そうなりませんように
と、ずっと祈りながら観ていた。
哀しいよ、それは。

作った人くらいちゃんと言ってあげてよ。
何でみんなふわっとしたことばかり言うの。

と、感情移入の罠に、はまっていた。

のぞみ役のペ・ドゥナは可愛かった。
裸身に見とれてしまった。
監督は本当は日本人で探していたが
みんな断られてしまったとフォロワーさんに教えてもらった。
結果、彼女で良かったと私も思う。
是枝監督作品て、キャスティングが理想過ぎるというか、もう少し抜け感がほしいかも
と思うことがよくあって
これはちょうど良いなと思ったりした。
それでも脇役やっぱり豪華なんだけれど(笑)


サンキャッチャーなのに、
月と星は夜のモチーフ。
というか宇宙だった。あのシーン好き。

純一の部屋が女子力高くて不思議な感じ。
生活感があるようでないような。
サロンみたいだった。

でも、空っぽじゃないんだよ。

万人にはおすすめできないが
私の受け取ったメッセージが合っていれば
嫌いじゃないし
それが意図と外れていたら嫌いかもしれない。
そんな感じの作品。


2020自宅鑑賞No.14/total83

その後原作読んじゃいました。
業田良家の絵柄ではこうはならないだろうと気になって。
短編20ページから広げたんですね。
繋がっている話も別に少しあったけど。

読んでみると、映画では要らないかなと思う部分が少し増えた。
ある1ページが良かったです。
ネタバレに入れます。
空海花

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