♪ 幕が上がるから、
なにもかも忘れたふりが出来るの
光よ
この正体を誰よりも美しく間違えてよ
さぁ!
ドラマを観たならば劇場版もね。
ということで本作も再鑑賞。というか、ぶっちゃけた話、以前は“受け入れられない”物語だったんですよ。主人公である姫川玲子の気持ちが解らなかったのです。
彼女に現実を重ねたのもあったんですね。
感情だけで理屈を大切にしない言動を“ある人”に重ねてしまったのです(その視点で捉えると未だに微妙ですが)。
ただ、僕も少しは成長したのでしょう。
今回は彼女の気持ちに寄り添うことが出来ました。
痛みを忘れるために選んだ道。
それは衝動かもしれないけど、愛とか恋とかではなく、防衛本能の先にあるものであり、決して彼女の正義を損ねるものではありません。
でも、正義なんて口にするものではない。
しかも“官”ならば広範囲に見渡すことが大切であり、局所的な感情に流されてはいけない。その原理原則と反してしまうのは、未だに傷を抱えているから…。そう考えると胸が痛いのです。
また、それを見守る菊田の視線。
以前に下僕体質と書きましたが、本作ではそれが花開き、物語をしっかり支える土台となっていました。いやぁ。切ないですな。理解したくても手が届かない痛み。やるせないです。
そんな彼らを責めるように降り続ける雨。
ここまで雨にこだわった映画も少ないと思いますよ。人の気分は天気に左右される、と誰かが言っていた気がしますが、まさに隠隠滅滅とした気分になる演出でした。
まあ、そんなわけで。
ドラマ版の着地点として捉えると限りなくツラいのですが、考えようによっては必然ともいえる物語。語り過ぎの演出が多い邦画の中では異質のクオリティだと思います。特に優れた映画ほど多面的に捉えられるもの。出来ることならば、彼女に寄り添う気持ちで臨んでください。