keith中村

二郎は鮨の夢を見るのkeith中村のレビュー・感想・評価

二郎は鮨の夢を見る(2011年製作の映画)
4.0
 もう移転したんだけど、以前私が勤める会社は数寄屋橋の塚本素山ビルという建物に入っていたんです。
 取締役にグルメな人がいて、時々晩御飯に誘ってくれた。
 「どこに行きたい?」と訊かれると、私は「あ。近場でいいですよ。このビルの地下の鮨屋とか」と言ったもんです。
 すると、彼は「いや、それは流石に無理」と苦笑するのが常だった。
 
 そう。塚本素山ビルの地下一階に入っているのが「すきやばし二郎」なのですよ。
 
 結局、というか、当たり前だけど、奢りだろうと自腹だろうと、喰ったことはない。
 それでも大したもので、それをひたすら言い続けていると、その取締役は「『二郎』は無理だけど、こっちで我慢して」と帝国ホテルの「なか田」を奢ってくれた。いや、「なか田」だって相当な高級店ですよ。ごちそうさまでした。
 
 この映画が作られる数年前に、うちの会社はこのビルから移転したんだけれど、当時から「最近はほとんど息子さん(本作に登場する禎一さんですね)が握っている」ということを聞いたし、まあ、もう一生、二郎さんが握った鮨を食べることはできないんだろうな。
 それでも二郎さん、何と、現在御年95歳でご存命ですよ。まだ握ってらっしゃるっぽい。
 
 ところで、行ったことはないけど、同じビルだったので、二郎さんや、息子の禎一さん、それにお弟子さんたちはしょっちゅう見かけましたよ。
 この映画に出てくるみたいに、店先で海苔を炙ってる風景は日常でした(毎日商売してるんだから当たり前なんだけど)。
 
 それにしても、とんだフードテロ映画ですね。
 こんな時間に観るもんじゃなかった。
 しかも、その欲求を満たすための「鮨」は喰うことができても、「二郎の鮨」は喰えないもんね~。今喰えないどころか、永遠に喰えないもんね~。
 
 ところで、私もいっときはグルメ気取りで「高いレストラン」を喰い歩いていた時期があって、行ったことがある中で最高級クラスのひとつは梅田のリッツのメインダイニング「ラ・ベ」でしょうか。ここはアルコールまで入れると、本作にも出てくる「すきやばし二郎の価格」を軽々超えるんだけど、ゆってもさ、フレンチのコースじゃん。夫婦で行ってゆったり会話しながらだと、1時間2時間とかじゃん。
 二郎は「15分3万円から」なんで、なんつーか、コスパの低さ、すげえっすよね。
(余談ですが、「ラ・ベ」のワインリストでいちばん安いのが、グラスのドンペリです。白ね。たしか10何年前で一杯8,000円だったかな? ドンペリがいちばん安いって笑うしかないでしょ? 引き攣るでしょ? もう意味不明! 牛丼何杯喰えるんだ?!)
 
 本作の良いところは、勝手に気難しい人だと想像してた小野二郎爺ちゃんの可愛さを堪能できるところ。
 その点で「ホドロフスキーのDUNE」と同じ感覚を味わえます。
 
 それと本作、特に築地あたりの描写がモンド映画っぽい雰囲気なのもいいですね。
 あと、本作はアメリカ映画だけど、例の「いかなる動物も傷つけていません」、American Humaneサーティファイド・ロゴは付けらんねえな(笑)

 今回、いつも通りの散漫なレビューになったので、最後に、「○○は△△の夢を見る」系映画を列挙して終わります。
 
「潜水服は蝶の夢を見る(2007)」
「二郎は鮨の夢を見る(2011)」
「ベッドはエロスの夢を見る(2012)」
「窮鼠はチーズの夢を見る(2020)」
「ヴェラは海の夢を見る(2021)」
 
 たくさんある気がしてたけど、意外と少ないのね。
「ブレードランナー(1982)」が最初かな? あれは原題がそうなだけなんだが。
 
 ちょっと拡大すると、まだあるようですね。
 
「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る(2011)」
「雨の日、家は夢を見る(2012)」
「獣は月夜に夢を見る(2014)」
「探偵は、今夜も憂鬱な夢を見る。(2017)」(2019年に続篇あり)
「三十路女はロマンチックな夢を見るか?(2017)」
「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない(2019)」
 
 それでは、本日はもう寝ます! みなさんもHave a Nice Dream!