回想シーンでご飯3杯いける

偽りなき者の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

偽りなき者(2012年製作の映画)
4.0
目の付け所が鋭くて、とても面白い作品だった。デンマーク制作によるサスペンス風味の群像劇で、主人公は幼稚園の男性職員。子供が作り話をするのは良くある事だけど、ここの女子クララが、ちょっとした好奇心や傷心がきっかけで園長先生に告白した作り話がちょっと拙かった。

「ルーカス先生大嫌い。だっておちんちんがピンと立ってた」

キリスト教徒が多いデンマーク。園長先生はこれを性的虐待と断定する。しかも田舎の小さな街での出来事だったから、この話は一気に広がりルーカス先生は変質者のレッテルを貼られ、村八分の状態になってしまう。

本作で描かれているのは、ルーカス先生がシロであるかクロであるかという事ではなく、大人の中にある「子供は嘘をつかない」という思い込みと、集団心理の怖さである。思い込みと偏見が状況を加速度的に悪化させていく描写が見事で、ぐいぐい引き込まれた。

クララは一貫して空想好きの無垢な女の子として描かれてるはずなのだが、時折挿入される長回しのアップでは、何処となく男を陥れる悪女のように見えてしまうのだから、これは演出の勝利なのだろう。結末も一筋縄ではいかない、実に良く練られた作品である。