slow

ある海辺の詩人 小さなヴェニスでのslowのレビュー・感想・評価

-
イタリアの小さな漁師町にやって来た、出稼ぎの中国人女性。長年その町に住む、ユーゴスラビアからの移民である初老の男性。物語は2人の心の交流を軸にしながら、美しい街並や景色、移民問題に触れていく。

ジャ・ジャンクー作品ではお馴染みのチャオ・タオが、詩と子供を愛する女性をしっとりと好演している。重いテーマを含みながらも後味がそうはならなかったのは、彼女の声と物腰の柔らかさのおかげだろう。
とりわけ景色が美しい本作だが、それらのシーンがもう数秒ずつ長い方が個人的には良かった。と言うのは小さな文句で、キャストも皆リアリティがあり素晴らしかったと思う。

孤独と優しさの出会いはただの日常の一片に過ぎなかったけれど、だからこそ観客に届いた部分も多かった。
どんな悲しみがあっても、目の前には全てを包み込んでくれるような世界が広がっている。その世界を切り取ることができたのも、ドキュメンタリー出身の監督だったからかもしれない。
slow

slow