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そして父になるのkazuのレビュー・感想・評価

そして父になる(2013年製作の映画)
5.0
星5じゃ…まったく足りない…。

子供取り違え問題。
血の繋がっていない子供を6年育てたところで突き付けられる衝撃。

誰一人簡単な立ち回りを許されない
この難役を

オールキャストが見事に演じきっているし、そのなかでも福山雅治の
内に秘めている感情がまるで可視化されてスクリーンに浮かび上がった錯覚すら感じさせる鳥肌ものの演技に
感動をも超越した何かを感じた。

この映画を通じて痛感させられたことが
幾つもある。

感動覚めやらないのでとりとめなく
書く。

血が繋がっているかどうかなんて
極論どうでもいい。

目の前の人、子供を
本気で愛せるか。

「大人」と「子供」の価値観。

子供にとってはずっと育ててくれた
目の前の二人が親であり
それが全てという価値観。

情報、常識、思い込みにがんじがらめになってそこから抜け出せず、
ある種「大人」になったことで
作り上げられた価値観。

初めて(血縁関係上)本当の親のもと
食卓には、
かたや餃子
かたやすき焼き。

大人の凝り固まった価値観で考えれば
そりゃすき焼きを選ぶし
喜ぶだろう。

だけど子供にとっては
毎日食卓に並ぶものがすなわち
ご馳走なのである。

噛みきれない安くて固い肉でも
それがご馳走なのである。

福山雅治が後半
「俺も一度母親に会いたくて家出した」
とこぼす。

そこで初めて
風吹ジュンが継母だと気付き
高橋和也の母(風吹ジュン)への接し方がどこかよそよそしかったことの意味が
わかる。

福山雅治もまた
いろんな価値観が子供の頃に
その与えられた環境の中で
自然に身に付き今に至っているのがわかる。

この脚本は本当に本当に素晴らしい。
観賞後すぐにもう一度観たくなるほど。


子供を寝かしつけたあとで
大人が自分(子供)のことで喧嘩をしている。
それを実は起きていて聞いている子供の
シーンには胸を打たれた。

そう、子供は大人が考えているよりも
いろんなことを感じているし
気づいているのである。

リリーフランキーや真木よう子の
出で立ち、言葉遣い、無教養な感じを
俺も序盤では福山雅治のように

「うわー古びた電気屋…」
「うわー箸の持ち方…」
などと思ったが
ストーリーが進むにつれて
大事なのはそこじゃないと思い知らされることになる。

少し本編とは話が逸れるが
この映画を観て、身につまされたことが2つ。

何十年も前、是枝監督の「幻の光」を
今は無きシネアミューズに観に行った。
当時の自分にはまったく肌が合わず
その後今日に至るまで
なんとなく是枝作品を敬遠気味だった。


そしてもうひとつ、
同じく何十年も前、福山雅治の
「ほんの5g」を鑑賞し
まったくもって肌に合わず、
こちらも今現在、福山雅治作品を
好んで観ることはなかった。


この2つの出来事が当時の自分の
「価値観」「思い込み」となり、
今回の作品を通してようやく氷解し、
是枝裕和、福山雅治に
大いなる尊敬の念を抱かずにはいられなくなった。


まるで本編の福山雅治と同じように
作品を観終わる頃には
大事なことがなにかを
思い出させてくれたような感覚。


登場人物の配置も素晴らしい。

リリーフランキー、真木よう子に対し
価値観、固定観念が相対している
福山雅治。

そしてその狭間で揺れる尾野真千子。

今さら出てきて
2つの家族を混乱に陥れる中村ゆり。

この中村ゆりが意図的に
子供取り違えの元凶な訳だけど
そこにフォーカスしない脚本も
素晴らしい。

というか
そこにフォーカスしてる時間はないし
もう子供と過ごした事実と
これからも過ごす未来があるだけである。


これから福山雅治作品、是枝裕和作品を
掘って行きたいと思います。

最高でした!

[追記]
翌日、感動が忘れられず再度鑑賞。
今日までいろんな映画観てきて
翌日にもう一度観るなんて…
はじめてかも。

内容をわかった上で観てるのに
二度目の方がもっと泣けた(>_<)
そんなことある?(>_<)

いかにシナリオが繊細かつ丁寧に練り込まれていたのかがよくわかった。

川原にて
「おじさんとおばさんはケイタのこと大好きだから」
「パパよりも?」
「………パパよりも…だ」

この言葉を口にする福山雅治
この言葉を受け止めるケイタ

儚く切ない名シーンとして
深く心に刻まれた。

一度目よりも二度目の鑑賞の方が
もっと最高でした。
kazu

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