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暗闇から手をのばせのwhiskeyのレビュー・感想・評価

暗闇から手をのばせ(2013年製作の映画)
3.7
山田太一脚本のNHKドラマ「男たちの旅路」に、いわゆる「障害者と性」の問題にまつわる印象的なシーンがある。

車椅子の青年が、両親に向かって真剣な面持ちで、「ソープランド(の当時の呼称。この言葉も鮮烈だった)に行きたい」と告げる。自分は足が不自由だし、結婚してくれる女性はきっといないだろう。そういうところでもいいから、一度でいいから女性と接してみたいのだと。
よしわかった行ってきなさいと、両親も悲壮な表情で言い、息子を送り出す。しかし実際に風俗街に行ってみると、何かあった場合の責任がとれないからとすべて断られる。
何もできないまま帰宅した青年は、両親を心配させまいとして、玄関先で「でへへ〜」と下品に笑って見せる。しかしやがて感極まって、嗚咽を漏らしながら号泣する。
(青年役は、若い頃の斎藤洋介さんが熱演していた)

もちろん、これもあくまで本質のある一面であって、何か理解できたわけではないけど、当時おそらく中学生ぐらいだった自分にとっては衝撃的で、ずっと心に残っていた。その後だいぶ経って、『私は障害者向けのデリヘル嬢』『セックスボランティア』などの書籍が刊行されたのを知り、事態は少しでも変わっているのかなと漠然と思っていた。


前置きばかり長くなってしまった。本作もこの問題を扱った作品。デリヘル嬢とその雇い主、3人の障害者との関係を、ややドキュメンタリー風に描いている。監督が完全に自費で撮影したらしい。

「障害者とデリヘル嬢、どっちが可哀想だと思う?」といった台詞は直接的で好みではなかったけど、全体の淡々とした雰囲気は好きだった。結論はないけど多少の希望はある感じ。
ともかく、撮れば絶対に批判を免れないこのテーマで映画を撮ったのは勇気があると思う。一生の間に何度も撮れないテーマなので、撮るしかないと思ったのかな。

大根仁氏が、この映画の小泉麻耶さんが凄くいいと褒めていて、だから自分が監督したドラマ「リバースエッジ 大川端探偵社」に出演してもらったのだと言っていた。たしかに良かった。彼女のおかげで、そういう職業の女性としてのリアリティを見せつつ、全体にきれいな印象になっている。彼女にはもっと活躍してほしい。

津田寛治、モロ師岡の両氏も微妙な役を好演していた。
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