そのじつ

凶悪のそのじつのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
3.2
実在の事件を元にしている…というふれこみだけでも相当迫力がある。

上告中の死刑囚がマスコミにコンタクトをとり「自分と同じ殺人者なのにのうのうと暮らしている」とある人物を告発する。
死刑囚の取材を担当することになった記者は始め半信半疑であったが、取材を進めるにつれそれが確信に変わってゆく。

記者役の山田孝之の顔面が終始重苦しくのしかかってくる。それがこの作品の印象。彼の妻役の池脇千鶴も負けていないが(^^)

殺人、暴行、それにまつわる犯罪が累々と積み重ねられてゆく様を観客に見せつけ殺伐とした犯罪ビジネスの現場に立ち合わせる中盤が見どころだと思う。

そしてこうした陰惨なコンテンツをエンタメとして消費する映像作品やマスコミも、そして視聴者も、もはや共犯では…という問いかけも生々しく重苦しい。
家族が壊れる可能性は誰しもあるのだから、これはアナタの問題でもあると投げかけてくる。誰かの死を願ってしまう自分に気づいたら、あなたはどうしますか?

しかしこれは山田孝之とピエール瀧のダブル主演では、と思えるくらい画面占有率を二分している。
そして山田演じる記者に対する突き放した撮り方とピエール演じる死刑囚への情を感じる撮り方が印象的。

ピエールが検挙された時、他の作品だが、出演箇所を削ったり差し替えたりせず上演を敢行した白石和彌監督。他にも出演作があるしピエールとの絆を感じさせる。
ルックスが特異で特有のエロさもあるピエールは貴重な俳優であることは間違いないとワタシも思う。

実在の事件がベースになっている事から来るのかもしれないが、様々な問題を多層的に盛り込んであり、それがイマイチ効果的に功を奏していない感がある。
観賞後は断片化した印象が残った。
そのじつ

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