こたつムービー

凶悪のこたつムービーのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
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見放題から落ちる報告ありこの度リファレンス。
こういう作品は忘れた頃見直すに限る!
10年前の鑑賞より解像度が上がる。
で、今回はただ見るのも芸がねえなぁと原作ルポ「凶悪・ある死刑囚の告発」も併せて読んだ。


不謹慎だが、
原作ルポ、映画の何倍も面白い。


グイグイくるから半日で一気に読める。また映画化にあたって何を省き何を潤色したか、原作にあたる愉しみにも満ちている。なおこの映画の代名詞になった「ぶっこむ」はちゃんと原作にも登場する。

もちろん映画版の味わいも確認できる。

キャスティングはむろんのこと、記者側の営みを着想・創作したのは映画ならではであり、親を「委託殺人すること」と「委託介護すること(老人ホーム)」とを対比してみせる。また、さいごの「先生」の対決は今回の方がキタ。


「他でもない、おまえが楽しんでるんだろ」と。


この想念は池脇千鶴にも言わせている。「あなた、こんな事件追っかけて、たのしかったんでしょ?」と。登場人物二人に同じ主張をさせているわけだ。

これは原作を読むと映画版の作り手がなぜこの後味にしたのか、ひしひしとわかるよ。
なぜなら、原作が面白すぎるから。
そして作者の筆も「乗ってる」からだ。
映画の作り手もこの実際の事件に「どうしようもない面白さ・覗きたい欲望」を自認するからこそ、内省的に終えるしかなかった、と言えるだろう。そしてそんな「不謹慎」な矛盾を、この作品を作る者と観る我々は共有している。


※読書レビューで恐縮だがもう一点だけ。
原作では警察の初動や「ことなかれ」な検察のうんこ具合もためになる(?)。茨城地検で3度目の人事異動でようやくGOがでる、など検察の腰引け具合が堪能できる(うれしくない)。リリー最後のガラス「コツコツ」はその意味もかかっている。こいつさえいなければ明るみにならなかったのに、と。