のほほんさん

凶悪ののほほんさんのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
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ようやく観ることが出来た。
観れて本当に良かった。
しかしあまりに強烈だ。

冒頭からとんでもないバイオレンスから始まり、目を背けたくなるシーンのオンパレード。特に酒を飲ませまくって老人を殺害するところは酸鼻を極めると言って良い。


そして恐ろしいことに、それを行なっている本人達は狂気に侵されている訳ではない。あくまでもごく普通のこととして人が苦しみ死ぬ様子を見て楽しんでいる。人を殺すことを何とも思っていないのだ。


むしろ狂気に侵されていくのは記者の方。彼を突き動かすのは正義感かもしれないし記者の本能なのかもしれないけれど、先生を引っ張り出した執念のみならず、須藤や先生の生死に対しても気持ちを入れ込むようになる。
凶悪に触れて深入りしたことで、狂気に走ってしまったように見える。


何にせよ、リリーさんピエールさんが怖すぎる。いつ何時ピエールさんの「動」の暴力性が爆発するのか分からない緊張感の合間に、リリーさんの「静」の凶暴性が染み渡る感じ。
まさに先生の言う通り、二人でそれぞれを補い合っているような関係だ。
「サニー」でもそうだったけど、最高で最悪なコンビだ。


そしてやはり、白石監督の作品は好きだ。
登場人物たちが何か手心を加えられてではなくて、その人として作品の中にマキシマムで存在する。
悪い人が沢山出てくるから、その人たちはその悪さをこれでもかというほどに見せつけてくる。
魅力的という言葉だと少し違う。
しかし目を離すことのできない圧倒的な吸引力がある。


7年前の事件から始まり、肝心の先生がいつまでたっても出てこない。
しかし記者の取材を通じて全貌が明らかになり、冒頭のシーンがピースとしてハマる構成も面白かった。