こたつむり

ペーパーボーイ 真夏の引力のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.6
♪ “あんな男のどこがいいんだ”って
  どなりつけてやりたい
  うつむいたままで語る おバカさんの君を

マシュー・マコノヒーの生尻。
ザック・エフロンの白ブリーフ。
ニコール・キッドマンのおしっこ。
ジョン・キューザックのエアオナニー。

え、えーと。これはサスペンス映画ですよね…?フランス書院のような愛と欲望、あるいは公園の片隅でガビガビになって落ちているエロ本のような扇情的な展開は…みみみみみ見間違いですよね?

…なんて思わず後退りしてしまう作品。
そう。一見するとフェチズムを満たす物語だから、同好の士以外は前のめりになれない…のですが、中身は骨太。基本的に“冤罪を疑う新聞記者の物語”ですし、南部の人種差別も絡んできますからね。硬派な筆致なのです。

それゆえに“キワモノ”が浮くわけで。
著名な役者さんたち(特にニコール・キッドマン)の体当たりの演技が功を奏して、禁忌で罪深いものに感じるのです。そして、それが迷走する主人公とオーバーラップして…やるせないのです。

いやぁ。これは見事ですよ。
リー・ダニエルズ監督の作品は初めてですが、乱暴ながらも結末に向かって収束させる手腕は凡百な作品では味わえない感覚。他の作品も要チェックですね。

まあ、そんなわけで。
土曜ワイド劇場のような終わり方(陳腐さと切なさと心強さと)に首を捻る部分もありますが、確実に良作。ただ“好き嫌い”が激しく分かれるタイプだと思います。面白いけど嫌い…そんな感想が出てくるのも本作の特徴じゃないでしょうか。

ちなみに僕は嫌いです。
だって…沼が怖いから。

『バスカヴィル家の犬』を彷彿するような底知れぬ闇。玉のような汗には虫。乾燥していればパキッと折れる枝すらも肌にまとわりつく…そんな湿地。

その中で暮らす…ってどれだけ拷問なのか。
想像もしたくない…そんな領域です。
やだ。フロリダこわい。
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