♪ 生温く心地よいのは終わり
使い古しの私じゃない
バグダッドと言えば中東。
…なんてイメージですが、本作の舞台はアメリカ。しかも制作はドイツ(当時は西ドイツ)。先入観に振り回されてはいけない…という話ですね。
それは作品の内容も同じ。
いきなり砂漠の真ん中から始まるし、説明的な描写は少ないし、共感できる登場人物もいないし…と安易に寄せ付けない雰囲気なんですが。気付けばググッと惹き込まれているのです。
いやぁ。これは名作ですよ。
日本初公開のときには、ミニシアターブームを巻き起こしたらしいですが、なるほど。その話も納得の仕上がり。確かにこれは地味に衝撃的。
全般的にアート的な感じなんですけどね。
俗な感覚も併せ持っているので、思わず口角が上がるんです。主人公と画家のエピソードなんて最たるものでした。
あと、触感が優しいんですよ。
刺々しいのは宿屋の女主人くらい。誰かを傷つける描写が皆無なんです。端的に言えば“ぺこぱ”的な映画なんですね。出来ることならば、記憶を消して再鑑賞したいです。時を巻き戻してくれ。
まあ、そんなわけで。
現実と乖離した展開も含めて、いわゆるひとつの“異文化交流”もの。それは劇中のドイツ人とアメリカ人の間だけではなく、この映画を鑑賞する人たちにとっても、現実とは違う“何か”を提示してくれる作品だと思います。
但し、それを掴めるかどうかは自分次第。
意地とかプライドとかも大切ですけどね。
それは他人を傷つけるために在るものではないと思います。臨むときは、地平線を眺めるように雄大な姿勢がオススメです。